超高齢社会の進展を背景に、在宅診療へのニーズは確実に高まっている。しかし、家庭という限られた療養環境での医療提供には、高度な技術と豊富な知識が求められるのも事実だ。そんな在宅医療の第一人者として全国的な知名度を持つのが、東京都大田区の大森にある鈴木内科医院院長の鈴木央医師だ。
前週までご紹介してきた「在宅専門医」と異なり、鈴木医師の在宅診療は、午前と午後の外来診療を診療所で行い、合間を縫って患者の自宅に往診に出かける昔ながらの「町医者」スタイル。これは診療所の創業者である父、鈴木壮一医師が実践してきた。
子供の頃から、昼夜の別なく往診カバンをさげて地域を走り回る父の姿を見ていた鈴木医師は、「いずれは自分もああなるんだろうな…」と考えていたという。
基本的に移動は、自転車である。狭い路地の多いこの地域は、車よりも自転車のほうが圧倒的に便利だ。街中を自転車で走っていると、患者や家族から声をかけられる。そのたびに鈴木医師も笑顔で応じる。