ロシアの残虐非道なウクライナ侵略が続く中、先進7カ国(G7)首脳会議がドイツ南部のエルマウで開かれたが、露呈したのは米欧日対露経済金融制裁の行き詰まりである。
G7サミットと銘打っているからには「成果」を誇示するが、宣言文を発表した時点で死文と化すのが例年のパターンだ。今回、首脳たちはロシア・プーチン大統領のマッチョぶりを話題に興じる軽さで、これではプーチン氏にコケにされるのも無理はないか。
対露追加制裁として話し合われたのは、ロシア産石油価格への上限設定やロシア産金の輸入禁止だが、「一物一価」の法則が働く国際商品の代表格である石油や金について、ロシア産の取引だけを排除するための実行策をどうするのか。
石油取引制限案は、G7設定の上限を超える価格で取引したロシア産石油を運ぶタンカーへの船舶保険提供を禁じるという具合だが、それならまず、世界の海上輸送損害保険の元締めである英国のロイズ保険組合に対し、ロシア産石油輸送タンカーへの保険適用を全面停止させればよい。行き場を失ったロシアの原油は価格を大幅に引き下げるしかなくなる。
金の国際取引の中心はロンドン市場で、ロシア金だけを標的に市場取引を禁止すれば済むのだが、ロシア産なくしてロンドン金市場は成り立たないから英ジョンソン首相は黙る。ロンドン市場は石油も金も自由市場という建前あってこそだが、それが扱う主力のロシア産を排除することは看板に偽りありとなるのを、英国は恐れる。