5月22日、劇画家で映画監督の石井隆氏が亡くなった。3年前から闘病生活を送っていたそうだが、周囲に明かすことはなかった。享年75。今回は石井氏が残したエロスとバイオレンスの匂いを振り返る。
独特の性愛とバイオレンス描写で若者から中高年までファン層も厚かった石井氏は1970年代の劇画ブームの火付け役のひとりだ。
早稲田大学在学中から文才と画才があった。「ヤングコミック」に発表した「天使のはらわた」(77年)が若者に受けて日活が目を付けた。
翌年には日活ロマンポルノで「女高生―天使のはらわた」(曾根中生監督)として映画化される。人気に火が付き、シリーズ化が決定すると、2作目では脚本家としてデビューすることに。
監督デビューは88年のシリーズ5作目「天使のはらわた 赤い眩暈(めまい)」だ。扇情的なシーンにもどこかメランコリックな感情があり、他のロマンポルノとは一線を画していた。
本作で主人公の名美を演じたのは、〝ポスト小林ひとみ〟として人気だったAV女優、桂木麻也子が演じてかわいいと好評。おなじみ村木役はまだ髪の毛がふさふさ(信じられない!)だった竹中直人。竹中はそれまで「笑いながら怒る人」などのネタでコメディアンデビューしていたが、この映画の主演を境に俳優として開花することになる。