ロシアと中国が、日本を恫喝(どうかつ)してきた。岸田文雄首相が出席したNATO(北大西洋条約機構)首脳会議で、中露への対抗姿勢が示された直後、ウラジーミル・プーチン露大統領は日本商社が出資している石油・天然ガス開発事業「サハリン2」を、事実上接収するような大統領令に署名した。中国は、日本周辺での軍事活動を活発化させている。猛暑のなか、日本には「エネルギー危機」が直撃しており、「安全保障政策」とともに、参院選(10日投開票)の重大争点になっている。ジャーナリストの加賀孝英氏が、中露の狙いと、岸田政権の覚悟に迫った。
◇
「プーチン氏と、中国の習近平国家主席が『日本は敵だ。岸田首相は裏切り者だ』などとブチ切れているようだ。日本総攻撃に出ている。官邸は右往左往している。危機的だ。日本は〝最悪の事態〟になりかねない」
外事警察関係者はこう語った。
ターニングポイントは、スペイン・マドリードで6月29、30日、開催されたNATO首脳会議だ。岸田首相は、日本の首相として初めて出席した。
NATOはここで、北欧のスウェーデンとフィンランドを加盟国とすることで合意した。そして、次の「歴史的転換」を全世界に宣言した。
■ロシアによるウクライナ侵攻を糾弾した。12年ぶりに行動指針「戦略概念」を更新して、ロシアをこれまでの「戦略的パートナー」から、「最大かつ直接的な脅威」と位置付け、事実上の敵国と認定した。
■中国について、国際秩序を破壊、軍事力で覇権拡大を企てていると、NATOとして初めて非難した。南・東シナ海や台湾周辺に対し、初めて積極的関与をうたった。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は同月29日、記者会見で次のように語った。
「モスクワと北京の戦略的パートナーシップが深化している」「中国は核兵器を含む軍備を増強し、周辺国と台湾を脅迫している」「国際秩序を守るため、(NATOは)パートナーと結束しなければならない」