抜群の走行感を楽しめる世界に一つだけの自転車。愛好家でなくても乗ってみたいものですね。そんな憧れの自転車をつくっているのが「フレームビルダー」と呼ばれる職人たちです。現在、日本には約80人が在籍し、それぞれに味わい深い自転車をつくっています。
なかでも、93年の歴史を誇る京都の自転車ブランド「VIGORE(ビゴーレ)」のフレームビルダー、片岡聖登さんは「余計なものをそぎ落とし、本質を追求した先に求める機能美」を体現する名人として知られ、国内外に多くのファンがいます。
そんな片岡さんが6月末、京都の伝統文化とコラボした自転車「70next 知足(ナナゼロ ネクスト チソク)」を発表しました。1970年代のクラシカルモデルに最先端技術を生かした自信作「70next」のフロントに京都の漆芸家・服部一斎氏の作品を描いた作品で、機能美の中に伝統美を生かしたクールな外観が魅力です。
それにしても、片岡さんのモットーは「余計なものをそぎ落とし、本質を追求した先に生まれる機能美」のはず。なぜ、わざわざ伝統美をプラスするのか、聞いてみました。すると、「京都の風景に溶け込んで、京都のまちを体感できる自転車を作りたかったからです」と意外な答えが返ってきました。つまり片岡さんはこの自転車で、京都の新しい楽しみ方を提案しているのです。