ロシアの侵攻を受けたウクライナの軍は、ドローン運用や前線と司令部との情報の送受信などに米スペースX社が開発した小型衛星による通信システム「スターリンク」を利用。劣勢とみられていたウクライナが抗戦する上で要とも言える役割を果たしている。米軍もスターリンクの本格的な導入を視野に入れる。一方、米国と対立を深める中国は危機感を募らせているとみられ、中国人研究者は「通信網の破壊や監視が必要だ」と訴えているが…。
■反撃
スペースXは米電気自動車(EV)テスラの最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業。通常、インターネット接続には基地局やケーブルなど地上に大規模な通信設備が必要だが、スターリンクは主に高度約550キロの低軌道上にある小型人工衛星のネットワークを利用し、地上インフラが不要だ。
直径約60センチの専用アンテナなどがあれば高速通信が可能で、すでに約2000基の人工衛星が打ち上げられたという。将来的には計1万2000基体制を目指し、地球のほぼ全域をカバーする計画だ。
通信設備が破壊されたウクライナの前線でも、ドローンで取得した映像や位置データの送信が可能となり、ロシア軍の拠点に効果的な反撃を加えることができている。ウクライナ軍は、傍受したロシア兵らの会話を人工知能(AI)で分析し、作戦立案などに活用しており、データの高速通信が不可欠。米戦略国際問題研究所(CSIS)は「スターリンクが(こうした技術の利用に)役立っている」と指摘する。