これほど惨憺たる場所は、かつて見たこともなかった。逸ノ城の初優勝で24日に終わった大相撲名古屋場所。7日目あたりから徐々に休場力士が増え始め、13日目は幕内で7人が休場したため、取組数がたった11番しかなかった。
爆発的に広がる新型コロナウイルスの影響とはいえ「入場料半額返せ」と言われても仕方ない状況だった。千秋楽は八角部屋の北勝富士の感染が判明し、十両以上の休場はけが人2人を含め23人と戦後最多。協会あいさつを終えた八角理事長(元横綱北勝海)は濃厚接触で職務を離れ、表彰式は陸奥事業部長(元大関霧島)が代役を務めた。
一つ屋根の下での団体生活が大前提だけに、各部屋とも細心の注意を払っていたとはいえ、コロナは容赦なく襲ってくる。部屋に1人でも陽性者が出れば濃厚接触として全員が出場できなくなる。
ある若手の親方からは「安心、安全はわかるが、同じ部屋でも複数回検査して陰性なら出場させてもいいのではないか」の声。夏の甲子園大会では、チームに陽性者が出た場合、個別の事案と判断されればチームの参加は差し止めず、試合2時間前まで選手の入れ替えを可能にしている。
ただ、ことし2月、初場所が終わった気の緩みからか場所後の花相撲が発端となって力士ら約250人が感染している。場所後でもこうなのに、本場所中の感染率が高まるのは当然。7日目に大関御嶽海が感染した時点で、後半の感染爆発は十分予測できたはずで、どっちにしても〝無策〟といわれても仕方ない。