五社英雄は「丹下左膳」を2度、演出している。1作目は1966年、五社が初めて東映に招かれて撮った映画「丹下左膳 飛燕居合斬り」だ。
物語の舞台は、八代将軍吉宗の世。政の黒幕・愚楽老人(河津清三郎)は柳生藩取り潰しを狙って、日光東照宮改修を命じる。柳生対馬守(丹波哲郎)は家宝「こけ猿の壺」に秘められた百万両で資金を賄うことを決意。だが壺はひょんなことからちょび安(金子吉延)の手に。そこに現れたのは、愛刀濡れ燕と飛燕居合斬りで悪を討つ隻眼隻手の剣士、丹下左膳(中村錦之助)だ。壺を巡って生真面目な柳生源三郎(木村功)、盗賊のお藤(淡路恵子)、与吉(藤岡琢也)、公儀隠密による争奪戦が繰り広げられる。
五社が起用された理由は、「三匹の侍」で見せたスピード感と予算内で作り上げる新感覚の画だったという。お藤が走りながら帯を解き、肌じゅばん1枚になって敵の目をひきつけたり、まるでラグビーのごとく壺を奪い合う場面など、躍動感があふれる。下緒を口にくわえてすっと刀を抜くときの錦之介の色っぽさもたまらない。