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船上で対等に向き合う役人と罪人 森鴎外「高瀬舟」京都市中京区・高瀬川一之船入1/2ページ

高瀬川一之船入
高瀬川一之船入

森鴎外(1862~1922年)の『高瀬舟』は、江戸時代に京都から大阪へと川を下っていく船上での一幕を描いた短編小説。当時の文筆家が文献や見聞をもとに編んだ随筆集「翁草」に収録された話が元ネタになっている。

森鴎外「高瀬舟」
森鴎外「高瀬舟」

〈お前の樣子を見れば、どうも島へ往くのを苦にしてはいないようだ。一体お前はどう思っているのだい〉

弟殺しで島流しになる喜助という罪人を護送するため、一緒に乗船した同心の羽田庄兵衛は、彼が晴れやかな顔をしているのが不思議でならず、つい声を掛ける。

喜助は答える。これまで必死で働いても銭は右から左に消えていたのに、牢にいれば仕事もしないで食べ物ももらえる。さらに流罪にあたって二百文(現在の価値で四、五千円)もいただけた、と。

庄兵衛は、家族を養いながらなんとか帳尻を合わせている自分の暮らしのことを考える。満足を覚えたことはない。心の平安も得られない。しかしこの罪人は、自分と違って足ることを知っている。

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