エコノミストたちの外国為替相場の「予測」ほど、無責任で人騒がせなものはない。今週初め、円ドル相場が1ドル=130円台まで付けた途端、潮のごとく引いたが、つい先週までは年末までには1ドル=200円近くまで下がるなどという「専門家」予想がネットに氾濫していた。
周辺からはそんな情報を突きつけられ、どう思うかと聞かれ、筆者はそのたびに「当たる当たらぬ易占いじゃあるまい。しょせんは市場の投機なんだから、いつ逆に円高に振れるかもしれないよ」と答えてきたが、相手は当然、納得しそうにない。
円安が止まらないとの前提に立つ有力エコノミストは「悪い円安」論を展開し、円安の元凶は日銀の異次元金融緩和政策にあると批判してきた。円安を止めるためには日銀が緩和を打ち切り、利上げすべきと提唱するわけである。
この考え方は、先の参院選での立憲民主党の主張にも影響を及ぼしたばかりではない。岸田文雄首相が任命し、日銀の政策委員会審議委員に就任した高田創氏も異次元緩和批判論者である。
だが、「悪い円安」論は不毛である。まず、「円安」だが、仮に150円であろうと、200円であろうと、その水準で安定すれば、「よい円安」になりうる。日本企業の国際競争力は高まるし、中国など海外よりも国内で生産したほうが有利なのだ。