夏真っ盛りの暑気払いには怪談がぴったり。そこでこんな依頼を取り上げてみた。
「先日、久々の飲み会で、怖いマンガが話題になりました。私たち世代にとっての怖いマンガと言えば、貸本恐怖マンガです。雑誌にも恐怖マンガはありましたけど、そんなに怖くはなかったのです。ところが、貸本屋で借りてくるマンガにはトラウマになるほど怖いマンガがありました。貸本で描いていた人たちも、雑誌で描くようになると怖さが薄まったように感じました。その理由を探ってくれませんか。ついで、というのもなんですが、あの頃の貸本恐怖マンガを読むことはできるでしょうか?」 (目玉おやじ・60代)
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貸本恐怖マンガの全盛期は1960年前後。怪奇ものの描き下ろし単行本のほかに、『怪談』『怪談ブック』『鬼』など、専門の短編集も登場して人気を競った。
いろいろ調べたところ、貸本マンガの版元はマンガ家の自由に任せていたから怖いホラーが生まれたということらしい。逆に、当時の雑誌編集者は「マンガは子どものもの」という固定観念から、子どもが怖がるような場面や残酷シーンを入れることをなかなか認めなかったので怖さが薄められた。
たとえば、水木しげるの代表的キャラクターである鬼太郎は、貸本時代には不気味なゆうれい族の子で、タイトルも『墓場鬼太郎』だった。雑誌に舞台を移すと正義の妖怪少年として悪い妖怪や悪い人間と戦うスタイルに変化。テレビアニメ化に伴いタイトルも『ゲゲゲの鬼太郎』に改められた。「良い子」の読者を意識するとそうなるのだ。