体の不調が起きるたびに異なる病院に行くことはないだろうか。患者情報が共有されずに同じ検査を何度も受けたり、余計な薬を処方されたりする懸念がある。横浜市立大の金子惇講師が日本の都市部の高齢者を調べると、いくつもの医療機関を受診する「ケアの分断」が起きていることが分かった。本来は「かかりつけ医」にまずは診てもらうのが理想。金子さんは、高齢化社会に向けてケアの分断をなくす必要を説く。
金子さんは横浜市の医療データベースを利用し、高齢者の受診行動を分析した。住民の保険診療の明細(レセプト)などを匿名化したものだ。
2018~19年に医療機関を4回以上受診した75歳以上は41万人。ほとんどが同じ医療機関ではなく、平均3・4カ所の異なる病院やクリニックを訪れていた。
なかには1年間に20カ所受診した人もいた。具体的な診療内容までは分からないが、病状が重いと受診自体が体に負担になる。「相談先が分かりにくかったり、別の医療機関を紹介されたりするケースもあるかもしれない」と金子さんはみる。
香港の研究者は住民が継続的な医療を受けられていない度合いを測る「ケアの分断指標」を提案した。受診回数や受診医療機関数などから計算し、0から1までの間で数値が大きくなるほど分断の度合いが高い。
金子さんが横浜市のデータから計算すると、香港やシンガポールの研究などから分断の度合いが高いと考えられる0・7以上の人が全体の26%を占めていた。

