北朝鮮による拉致被害者の家族会が、金正恩(キム・ジョンウン)総書記に向けたメッセージが注目されている。親世代の家族が存命のうちに全被害者の即時一括帰国が実現するなら、北朝鮮への人道支援に「反対しない」という内容だ。一見譲歩のようにも映るが、期限を過ぎれば、日本国民の怒りは収まらず、人道支援はおろか国交正常化も果たせない。正恩氏を直撃する〝時限爆弾〟の意味も含まれている。
◇
「(家族に)残された時間がないという切迫感を肌で感じている」
拉致被害者、横田めぐみさん(58)=拉致当時(13)=の弟で、家族会代表の拓也さん(54)は26日、都内で開かれた家族会と救出支援組織「救う会」の合同会議で、高齢化する家族の思いを語った。
会議では、3回目となる正恩氏への次のようなメッセージを採択した。
これまでの「帰国した被害者や家族に秘密公開を求めない」「日朝国交正常化に反対しない」に加え、新たに「日本が北朝鮮に人道支援を行うことに反対しない」という内容が盛り込まれた。ただし、「親世代の存命中」、という期限を設けた。
現在存命する親世代は、めぐみさんの母、早紀江さん(87)と、有本恵子さん(63)=同(23)=の父、明弘さん(94)のみとなっている。年齢的に残された時間は決して多くなく、一刻も早く被害者帰国を実現したいという家族会の焦りが見える。
だが、ある救出運動関係者は「親世代が亡くなった後に被害者が帰ってきても、日本国内の世論の怒りはおさまらず、日朝関係は永遠に良くならない。人道支援はおろか、国交正常化後の経済協力も絶対にもらえないだろう」と明かす。
異例のペースで弾道ミサイルを発射し続け、ウクライナ侵略を続けるロシアへの武器提供情報が指摘される北朝鮮だが、国内では餓死者が相次いでいると伝えられている。拉致被害者家族をはじめとする国際社会の思いにどう応えるかは、北朝鮮の将来を左右することになりそうだ。