【マンション業界の秘密】マンションの廃墟化は法改正で防げる 相続の分離放棄などちょっとした発想の転換が必要

深刻化するマンションの老朽化問題。だが、防ぐ方法はある(写真と本部は関係ありません)

 マンションの老朽化をテーマにした勉強会で講演をさせていただいた。内容は「マンションの廃虚化を一気に解決する方法」。それを要約してみたい。

 鉄筋コンクリート造のマンションは日々老朽化する。そして、この国の老朽マンションは決して減ることはない。増える一方だ。

 築40年を超える物件では老朽化が目立ってくる。しかし、老朽化した物件が廃虚になる原因は建物の劣化ではない。建物は適切なメンテナンスを施せば100年程度は使用に耐えられるとみられている。

 首都圏で廃虚化した分譲マンションの例はまだほとんどないはずだ。資産価値がある限り区分所有者がお金を出して建物を保全しようとするためで、具体的に言えば、管理費や修繕積立金がきちんと払われているマンションは廃虚化しない。

 しかし、区分所有者が管理費等を滞納しだして、その割合が総戸数の半分近くになると、その物件は廃虚化の危機を迎える。今後、そういうマンションは急増しそうだ。

 ただ、各住戸の資産価値が500万円以上あれば、弁護士に依頼して競売や公売にかけて未収の管理費を回収することが可能だ。現に、そういうケースはある。

 しかし、競売にかけても200万円程度しか回収できないようなマンションだと、現行法の範囲では打つ手がなくなる。

 私の考えは、民法や区分所有法を大幅改正して資産価値500万円未満のマンションを廃虚化の道から救うというもの。

 まず、すべての管理組合を法人化する。法人格のある組合はマンションの住戸を買い取れる。

 次に民法を改正して区分所有権については相続において分離放棄できるようにする。

 例えば、多摩ニュータウンにある老朽マンションと現金や株式などの相続財産が発生した場合、今ならすべてを相続するか、あるいは全部を放棄するしかない。しかし区分所有権の分離放棄が可能となると、「多摩ニューのマンションだけは放棄」という選択が可能となる。

 ただし、部分放棄された区分所有権は必ずそのマンションの管理組合が取得するようにしておく。

 また、管理費等を5年以上滞納したマンションの所有権も、裁判所の判決を得て管理組合が取得できるようにする。

 そういう住戸を取得した管理組合は、売却できるものは売却して新たな区分所有者から管理費等を徴収できるようにする。売却できないものは賃貸や民泊などで収益を図る。デイサービスなどのケア施設を作ってもいいだろう。あるいは、交換などによって住居部分を集中させ、共用部への経費などの出費を軽減させることも可能になる。

 マンションの老朽化というのは、人間の高齢化と同じで防ぎようがない。だからできるだけ健康なカタチで長生きさせる手法を考えるべきだ。そのためにはちょっとした発想の転換や法律の改正が必要となる。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。