【日本の元気】チョコレートで進む「環業革命」 コンビニに並ぶあの人気商品の原料、トメアスー産カカオ豆

明治ザ・チョコレートのパッケージ裏にはトメアスー産の文字

 ヒット中の「明治ザ・チョコレート」シリーズ。そのうち3種にブラジルトメアスー産のカカオ豆が90%以上使用されている。そのトメアスーはブラジルのアマゾン、パラー州にあり、海外では最大の日本人移住地だ。

 日本人移住者たちがトメアスーに入植して80周年を迎えた2009年、現地では大規模な祝典が開催、私も駆けつけた。トメアスーでは、荒廃した農地を森林として再生、その森林内に農作物を植える「森林農業」が広がりつつあっただけに、80周年祭はトメアスーの新しい時代の始まりを告げるように思えた。

 その森林農業の先達である坂口陞(のぼる)さんは、80周年祭の直前に他界されてしまったのが何とも残念だった。私は坂口さんの仏壇の前で「供養講演」を行ったのだが、この80周年祭には明治のチョコレートの専門家も来訪していた。

 トメアスー総合農業協同組合(CAMTA)は、JICA(海外協力事業団)の支援で建設されたジュース工場で、森林農業によるトロピカルフルーツのジュースを生産してきた。収穫したばかりのフルーツを絞って即座に冷凍パッケージにし、オーガニック食品としてブラジル国内や世界に輸出するのだ。

 そのCAMTAからジュースの輸入を続けてきたのが、フルッタフルッタ社だ。社長の長澤誠さんは若いころスイスのチョコレートの専門学校で学んだ経験があり、明治はその長澤さんの紹介でトメアスーを訪れたのだと聞いた。

 明治の専門家はカカオ豆の栽培地や農場でのカカオ豆の発酵工程などを見て回ったが、いささか厳しい顔つきだった。世界に通用するチョコレート原料としては、生産技術が未熟だったからだろう。

 しかし、オーガニック原料としてのトメアスー産のカカオ豆の魅力は大きい。そのため、明治のチョコレート技術者たちはその後数回にわたりトメアスーを訪問し、高品質の原料製造技術を指導したという。こうして、トメアスー産の「明治ザ・チョコレート」3種が日本のコンビニにも並び、人気を博すようになったのだ。

 14年、チョコレートの販売金額は和菓子を抜いて菓子のトップになった。私は獨協大学での環境ビジネス論の講義でこのトメアスー産チョコレートの経緯を話し、受講学生に試食してもらい意見を聞いたが、若い世代のチョコレート好きがきわめて多いことを実感した。だがチョコレートは、高齢者にとっても健康維持に優れた嗜好食品なのだ。

 17年度の農芸化学女性企業研究者賞(農芸化学会)を受賞した明治の夏目みどりさんは、その受賞記念講演で、動物実験ではあるがチョコレートに含まれるカカオポリフェノールについての研究成果を披露している。それによれば、カカオポリフェノールには抗がん作用があり、動脈硬化や糖尿病の予防効果、さらに白内障による水晶体の白濁も抑制することが確かめられたという。

 トメアスー産カカオ豆によるチョコレートが、アマゾンの「環業革命」(=環境と経済が調和した新産業革命、山根一眞の造語)を進めるとともに、私たちの健康にもプラスというのは何ともいい話だ。

 ■山根一眞(やまね・かずま) ノンフィクション作家、獨協大学特任教授。1947年、東京生まれ。獨協大学ドイツ語学科卒。執筆分野は先端科学技術、環境、巨大災害、情報の仕事術など幅広い。近刊は『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』。理化学研究所相談役、JAXA客員、福井県文化顧問、3・11大指復興アクション代表、日本文藝家協会会員。