【マンション業界の秘密】不動産選びは「美人投票」の法則で 資産価値を予想、“思い入れ”はNG

誰もがいいという物件を選ぶのがコツだ

 マンション購入の相談を受けていると、各人の場所への「思い入れ」がかなり影響していることをよく感じる。

 最も多いのは「今住んでいるが、とても住みやすいからこの周辺で」という選び方。そのほかにも、生まれ育ったところに近いからとか、奥さんの実家に近い。あるいは愛する母校の近くといった選び方をする人がいる。

 地域のコミュニティーに入っていて、それが心地いいので抜けたくない、というような事情を語る人もいる。

 それぞれ、どう考えてマンションを選ぶかは自由だ。各人の思い出や交友関係をうんぬんするのは私の仕事ではない。

 私が助言する価値観はただ1つ。その物件は資産価値としてどのように評価されていて、今後はどうなると予想できるか。

 時々、相談者が「買いたい」という物件を資産価値的にあまり高く評価できなかったりする。相談者は、私に「資産価値的にも大丈夫ですよ」と言ってほしくてやってきているから気の毒だ。だが、私は私の考えを語ることにしている。

 自分たちが住むだけなら、思い入れのある場所にマンションを購入するのもいいだろう。購入についても、その後の暮らしも満足度は高くなる。

 しかし、買ってしまった物件には面倒くさいことがいっぱいある。一番は管理。そして、さまざまに発生する費用やリスク。それでも資産価値の高い物件ならそういった面倒くささを乗り越えやすい。

 問題は、20年後あるいは30年後には資産価値がほとんど見込めないようなマンションの場合だ。自分たちが暮らさなくなった後で売るに売れない、貸すに貸せないような物件になっていたらどうだろう。鉄筋コンクリート造のマンションは、車のように廃車にして処分することは不可能だ。

 自分たちが亡くなった後の相続も厄介。子供たちが「こんなものを残してくれて…」と恨まれる物件になっている可能性も高い。

 ただ、自分たちの住まいならまだ傷は浅いかもしれないが、不動産投資を行う時に思い入れで物件を選んだりすると、傷口は広がる。その物件が、今は一定以上の利回りを確保できていても未来は分からない。人口増加が見込めないばかりか減少が確実に予測されるエリアにある投資物件は、時間とともに確実に投資効率が悪化する。高そうに見えている利回りはその時が最高で、徐々に低下する運命にあるのだ。

 そうでなくても、マンションやアパートは建物が日々劣化する。経済学者のケインズは株式投資における勝利の方程式を、「他の人も美人(有望)だと思う人(銘柄)に投票(投資)すべき」と唱えた。これは不動産の物件選びでも適用できる。

 自分が好ましいと思うから高い資産価値を有していたり、投資向けとして優良な物件なのではない。他の多くの人が好ましいと思ってくれてこそ、資産価値は高く評価できるのだ。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。