【マンション業界の秘密】不動産市場のピークまだ? 最高値で取引成立の不気味さ 採算合わないが…

大都市では建設ラッシュが続いている(写真と本文は関係ありません)

 相場の格言に「もうはまだなり、まだはもうなり」というのがある。「もうそろそろ上昇局面は終わった」と思っていてもまだ終わっていなかったとか、「まだまだ続くだろう」と読んでいたら、実はその時にはもう終わっている、ということを言う。

 2017年、私は都心の不動産市場がピークアウトしていると見ていた。しかし、「もうはまだ」だったかもしれない。今年に入り、身近なところで素っ高値(最高値)な取引をいくつか見てしまった。いずれもマンションもしくはホテル用の事業用地だ。

 私からすると、「そんな高値で買って採算合うのですか」と言いたい高値取引だった。

 東京の都心では、まだまだバブルと言っていい状態が続いているようだ。もはや、事業採算面でも需給関係でも説明できない高値まで、土地の値段が高騰している。

 一方、一般消費者が主要なプレーヤーである中古マンション市場はいたって低調だと言わざるを得ない。私も及ばずながらいくつかの中古マンションの売却をお手伝いしているが、動きはかなり鈍い。実需は相当弱っていると思われる。

 私は1990年代の初頭に終焉した平成の大バブルと、2008年のリーマン・ショックで崩壊した不動産ミニバブルの両方を見てきた。それに比べて、今回の局地バブルは分かりにくい。

 しかしネットのニュースメディアなどを見ていると、いつまでも下がらない不動産価格に追随するかのように「これはバブルではない」という論調の記事が目立ってきた。

 過去2回のバブル崩壊の軌跡をたどれば、これは重要なシグナルかもしれない。つまり「まだはもう」という可能性だ。

 今回の局地バブルが前2回と異なるのは、プレーヤーの顔ぶれだ。平成大バブルは、国民参加型。日本中の不動産が値上がりして、土地を保有しているすべての人に恩恵があった。

 リーマン・ショックで崩れたミニバブルは地方の主要都市まで及んだが、そこまで。参加したのは不動産業者とファンドマネー。一般人はその周辺で踊っただけ。

 今回の局地バブルは、エリア限定。地方は札幌、仙台、広島、福岡まで。このうち仙台と福岡は実需で値上がりしているので、実のところ、バブルとは言い難い。主なプレーヤーは外国人と富裕層、ホテルとマンションの開発業者。ただ、すでに外国人の中でも東アジア系は影が薄れてきた。また、一般人は加わっていない。その点、かなり実体が弱いとも言える。

 この局地バブルも、いずれ崩壊する。都心でも不動産価格はそのうち下がり始める。怖いのは、その次に再上昇するような局面が来るとは考えにくいことだ。

 金利動向、人口減少、少子高齢化、住宅余剰、財政赤字、生産緑地、インフラ負担…どれをとっても、今後の不動産価格に好ましい影響を与えるとは思えない。今は嵐の前の静けさか。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。