【介護離職に備えよ】“争続”を誘発する遺産相続の討論、専門家に依頼で回避

身内同士での“争続”は急激に増えている

 先日、筆者のオフィスに50代の女性から相談があった。実父が最近亡くなったが、その葬儀の際、長く疎遠だった兄から「父から預かった遺言書だ」と封書を手渡され、その内容を見て驚いたという内容だった。

 その「遺言書」には、実家の土地家屋や主だった財産はすべて兄に相続させると書かれていたのだ。一方、相談者は長女だったが、彼女に対しては「これまで金銭的な支援をしてきたのだから相続から外す」という記述まであったという。

 彼女は「大学時代の学費や仕送りはともかく、それ以外の金銭的な支援はほとんどなかった。なぜ父がそのような事実でないことを遺言書に残したのか。それをなぜ疎遠だった兄に託したのか。このままでは納得できない。そもそも、本当に父親が作成した遺言書なのか」と訴えてきた。まさに争続(相続)の相談であった。

 そこで、念のため、筆者のオフィスの相談員が遺言書を確認したところ、A4用紙にワープロ印字で手紙のような内容で記述され、最後に自筆したと思われる父の名前が記されて認印が押印された形式の「遺言書」だった。

 相談員がまずアドバイスしたのは、その「遺言書」は民法にのっとっていない(自筆や公正証書でない)記載なので無効だということだ。ただし、有効か無効かの以前に、その相続内容について兄と討論をするのは、いたずらに“争続”を誘発するだけだということも伝えた。

 また、このケースでは相続税申告の可能性が高いので、相続発生から10カ月以内に財産調査をして協議をしなければ、税務調査が行われるなどさまざまな問題が生じてしまうということも伝えた。

 そのうえで、相続人である兄妹で専門家に依頼し、相続手続きを進めた方がよいとアドバイスした。相談者の女性には、兄に対して「当事者同士、現況を客観視して手続きを進めていきましょう」と前向きな意見をした方がよいと伝えた。

 今回の相談者は、相続の不公平を改めたい気持ちもあるが、むしろ“争続”にしたくないという思いが強かったようなので、こうしたアドバイスをしたが、いまや身内同士での争続は急激に増えている。誰の身にも起こりうることだと十分に意識しておきたい。

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 ■大澤尚宏(おおさわ・たかひろ) オヤノコトネット(www.oyanokoto.net)代表取締役。1995年に日本初の本格的バリアフリー生活情報誌を創刊。2008年、「そろそろ親のこと」(商標登録)をブランドにオヤノコトネットを創業し、「高齢期の親と家族」に関わるセミナー講師や企業のマーケティングアドバイザーとして活躍している