【マンション業界の秘密】金融政策と不動産市場の危うい関係 緩和で「好景気」も世界は引き締めへ

日銀の黒田総裁続投と不動産市場には密接な関係が…

 黒田東彦日本銀行総裁が続投となりそうだ。日銀の総裁人事など、マンション市場には何の関係もないように思えるが、実は大ありだ。

 黒田氏が今の地位に就いたのは2013年の3月だった。日本はまだリーマン・ショックから続く不況にあえいでいた。当時、あの不況脱出について経済学者やエコノミストたちがさまざまな処方箋を提示していた。その1つが「リフレ」である。

 正式にはリフレーション。ざっくりと言えば、世の中のお金を増やして金利を下げれば景気がよくなるだろう、という考え方。黒田氏は日銀総裁に就任すると、躊躇(ちゅうちょ)なくこの理論を実践した。異次元金融緩和と呼ばれる一連の政策だ。これは見事に成功して、今の日本は戦後最長と言われる好景気サイクルにあるらしい。ただ、実感は伴っていない。

 実は黒田氏が日銀に就任した当時、リフレは経済学の世界ではキワモノ扱いされていた。当時の主流派経済学者からは疑問視されていたのである。

 13年3月時点の日銀政策委員の中でリフレ派が主流だったとは思えない。ただ黒田氏の政策が成功した今、リフレ派は経済学会の主流になりつつあるようにもみえる。

 そして今、黒田氏の続投が既定路線となった。彼がこの5年間続けてきた金融緩和政策を次の任期で転換するとは思えない。つまり、政策金利は当面上がりそうにない。ということは、異次元金融緩和によって生じた不動産の局地バブルが、金利上昇で崩壊する事態は当面先送りされたことになる。

 黒田氏が総裁に就任して以来、不動産市場は地域限定ながらバブル化してきた。金利低下とマネタリーベースのおかげで不動産市場にも潤沢な資金が流入し、価格を押し上げたのだ。

 しかし、米国でも欧州でも金融は緩和から引き締めへと政策転換されている。日本だけがいつまでも金融緩和を続けてはいられない。実際、統計的には景気が回復しているのに金融政策だけが「不況対策」になっているのもおかしな話だ。黒田氏は「物価上昇目標年率2%」という公約を先送りしていることをメディアからたたかれているので、メンツ的に景気対策の看板を引っ込められないだけかもしれない。

 仮に、日本も世界の潮流にならって金融引き締めへと政策が転換されると、不動産市場はそれを転機に下落へと潮目を変える可能性が高い。そうなると、当然マンションの価格も下落基調となる。

 現状ではリーマン・ショック級の事件が起こらない限り、不動産市場の急激な下落局面は訪れないだろう。しかし、金融情勢は常に要注意。今や金融政策とマンション市場は危うい連動関係にある。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。