【経済快説】長期・積立・分散投資の違いと利点 金融マンの言う「分散投資」は注意必要

ビジネスマンも投資についてよく考えておきたい

 昨年対象者が拡大した「iDeCo(個人型確定拠出年金)」に加えて、今年から、「つみたてNISA」が始まり、積み立て投資が普及しつつある。特に、金融庁は「長期・積立・分散投資」をキャッチフレーズに投資の普及に力を入れている。

 長期投資、積立投資、分散投資は、個人のお金の運用にあって、いずれも重要な概念だが、一般に案外誤解されている。投資の入門書でも、これら3つを正確に解説したものは案外少ない。

 まず、「投資」とは自分のお金をある期間、経済の生産活動に参加させて、その成果の一部を受け取ろうとする行為だ。長期投資の目的は、資金を長い期間働かせて、より大きなリターン(投資収益)を得ることにある。

 長期投資にあって複利の効果を強調することがある。複利で「意外に」資産が増えることはよくあるが、複利自体は算術的な事実に過ぎない。

 長期で投資するとリスクが縮小する、と説明されることがよくあるが、これは正しくない。投資期間と共に、期待されるリターンもリスクも拡大するので、長期投資はリスクの点で有利になるわけではない。

 一方、積立投資のメリットはもっぱら心理的な実行のしやすさにある。

 月々いくらという定額の積立投資は、貯蓄の計画・習慣と相性が良く実行しやすい。株価が変化すると、毎月の貯蓄額が変わるといった仕組みよりも定額がやりやすい。

 また、一定のルールに基づいて投資するので、個々の投資を決断して、決断の失敗を後で後悔する心配をしなくてもいい点で実行しやすい。行動経済学でいうところの「後悔回避」の傾向と相性がいいのだ。

 さらに、何度にも分けて投資対象を購入すると、購入の平均単価が気になりにくい点も心理的なメリットだ。例えば、日経平均に連動するインデックス・ファンドを「日経平均が2万3000円の時に買った」ということを覚えていると、毎日の株価変動で自分の損得(特に損)が気になってしまうが、何度にも分けて買っていると、自分の買い値が気になりにくい。

 まとめて投資できるお金が既に手元にあり、投資すべき額が決まっている場合、積立投資でゆっくり買うことには、「気休め」以上の意味がないので、早くまとめて投資して、より大きな金額をより長く投資するのが正解だ。

 分散投資は、投資家の努力でリスクを低下させることができる真に有効な行動だ。例えば、世界の株式に広く投資するインデックス・ファンドなどに投資するといい。

 金融機関は「分散投資」を理由に、手数料の高い商品を勧めたり、顧客の運用を複雑化したりすることがある。金融マンの言う「分散投資」には注意が必要だ。(経済評論家・山崎元)