【セカンドキャリアの達人に聞く】15年間の介護職経て“美容と写真”で可能性模索 認知症の女性にネイルしたら暴言止む

山田真由美さん

★(4)ソーシャルビューティーフォト社長・山田真由美さん

 「定年退職してから始めるより、50歳目前でスタートする方が良いと考えた」と語るのは、高齢者向け撮影サービスを行うソーシャルビューティーフォト(東京都中央区)社長の山田真由美さん(49)。

 山田さんは、高校卒業後、レナウンに入社。経理、人事、総務などの事務職を務め、22歳で退社。23歳で結婚、24歳で出産した。その後、ファストフード店などでアルバイトとして働きながら、ホームヘルパーの資格を取っている。

 介護保険制度が始まり、「資格を取ると良さそうだよ」と、アルバイト先の友人からアドバイスされたのが、山田さんが介護の仕事に興味を持ったきっかけだった。

 資格取得後は、介護施設に勤務。介護福祉士と介護支援専門員の資格も取得した。

 山田さんは、高齢者と接する中で「メイクをすると元気になったり、認知症の女性がネイルを塗ったら暴言を吐かなくなったりという姿を見て、高齢者の美容の必要性や可能性に気がついた」という。

 介護の仕事を続けながら美容学校に通い、41歳で美容師免許を、その後は福祉美容師の資格も取得。勤めていた介護施設でプロジェクトチームを作り、入居者などに、エステやヘアメイク、ネイルなどを楽しんでもらう高齢者美容に取り組むようになった。

 そして、美しく変身して笑顔になった高齢者を写真で記録に残したいと考えた。

 ある日、テレビを見ていた山田さんは、ユニークな女性写真家の存在を知る。ゴミ袋に詰められた姿など自虐的で斬新な自撮り写真で「自撮りおばあちゃん」として一躍有名になった西本喜美子さんだ。

 山田さんは、西本さんの写真展に足を運び、西本さんの写真の師である息子の西本和民さんから写真を学ぶことにした。

 「西本喜美子さんが写真を始めたのは72歳の時。私はまだまだ若いと思いました」

 一緒に写真塾で学ぶ生徒から「介護と美容と写真が出来れば仕事になるじゃない」と言われたのをきっかけに、高齢者向けにメイクから撮影までをトータルで提供するビジネスを始めようと思いついた。15年間続けた介護の仕事を辞め、2019年12月に起業した。

 シニア向け出張撮影や、施設入居者向け撮影が事業の柱。だが、起業からまもなく、新型コロナウイルスの感染が広がった。重症化のリスクが高い高齢者が利用する介護施設では、外部からの立ち入りを禁止したり制限したりするなど警戒を強めている。

 「2月末頃から介護施設への出入りが難しくなりました。個人宅には3月中旬くらいまでご依頼があれば伺っていましたが、いよいよ大変な事態になっているので、今後の訪問日程は、一旦白紙にしています」

 起業早々に思わぬ試練を迎えたが、山田さんは、介護施設だけでなく、アクティブシニアに向けた取り組みや、地域活性化に関わる企画も新たに考えている最中だという。

 「終息したら、落ち込んでいる皆さんにたくさんの笑顔を届けたいです」

 いつか訪れる終息に向けて、着々と準備を進めている(ジャーナリスト 渡辺タカコ)