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【トップ直撃】『越乃景虎』諸橋酒造・諸橋麻貴社長、手造りの極み「秒単位の作業も多い」 (3/3ページ)

 【社長の覚悟】

 中学生のとき一回り年上の姉が遠方へ嫁いだ。家には跡取りと呼べる人がいなくなり、「私が継がなければこの仕事が絶えると思ったとき、漠然とですが、いずれ私に跡取りの話がくるのかなと、“そのとき”を迎える心構えをしました」。

 先代の乕夫さんは肺炎などを患い亡くなる半年前、麻貴さんと数人の近親者を枕元に呼び「頼む」と後継を託した。

 「長い長い握手を父としました。私はあのとき、ついにその日がきたと思いました」と社長の座に就く決断をしたことを明かす。

 しかし、乕夫さんは信子さんに「あの子に苦労の多いこの仕事を継がせるなどかわいそうでならん」と言い残したそうだ。苦労は夫婦で分かち合うという手もあるが…と問うと、「結婚? ご縁があればと思いますが」とクスリ。

 【父との会話】

 小中高は両親が車で送迎してくれたが、ドライブ好きだった乕夫さんは麻貴さんを迎えにハンドルを握るのを楽しみにしていたそうだ。大学時代も、仙台市にある東北大学までの往復8時間も苦にせず、送迎を買って出た。

 「試験、嫌だな」「今の実力で臨めばいいんだよ、何事も」と、とつとつと“人生訓”らしき話をすることもあった。

 「この仕事は家を空けることができないので旅行はできません。でも父とは土日になると日帰りで金沢辺りまで出かけ、季節の花々をよく見に行きました」

 【日課】

 朝は早い。6時起床。8時過ぎには廊下を隔てて隣接する会社に出社する。

 仏壇と吹き抜けの天井まで届く大きな神棚、あちこちにまつられたお酒や商売の神々に、昨日の無事のお礼と今日一日の無事を祈願後、社長室の隣の座卓に座り仕事を開始。20代から70代までの社員からの日報や書類に目を通す。

 昼は母の手作りのランチを食べ、5時の終業まで。だがそこで仕事は終わらず、残業になることもしばしばだ。寝るのは零時過ぎ。「ベッドに入るときが一日のうちで最もホッとする瞬間」だそうだ。

 【会社メモ】 清酒、梅酒などの製造販売。本社・新潟県長岡市。1847(弘化3)年秋創業。戦時中、企業整備令のため一時休業を強いられる。1948年9月、みそ・醤油を製造販売しながら、個人営業から法人営業に組織変更し、社名を和不二醸造とする。その後、清酒製造の復元を認められ、57年から現社名。資本金1200万円。売上高は非公開。従業員数約30人。

 ■諸橋麻貴(もろはし・まき) 1979年11月4日生まれ。新潟県長岡市出身。38歳。東北大学法学部卒。北越銀行勤務を経て、2016年夏、諸橋酒造の社長に就任した。

 

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