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【定年後の居場所】「ザ・タイガース」ドラマー、瞳みのるの公演で過去の自分と“再会” この世に一つだけの「物語」思い出す (2/2ページ)

 瞳さんは1971年のザ・タイガース解散以後、芸能界をスパッと引退。1年間の猛勉強をへて慶應義塾大学に合格した。中国文学の研究のために大学院に進学し、さらに北京大学にも留学。大学院修了後は慶應義塾高校で33年間教鞭を執る。私の高校時代の同級生は、瞳さんは文学部の授業でいつも一番前に座っていたと言っていた。

 この日のステージでも、中国語に訳した歌詞や、中国の曲を披露していた。彼は60代半ばになって若い頃に取り組んだ音楽活動を再開している。この戻り方が何とも言えず素晴らしいと私は思うのだ。

 アンコールの曲は「シーサイド・バウンド」。観客全員で音楽に合わせて踊りだした。瞳さんの指導よろしく、音感もリズム感もない私でも何とかステップが踏めたのがうれしかった。

 過去の自分に出会うことも定年後の居場所につながるのではないか。それは平凡に見えたとしても取り替えの利かない、この世にたった一つの『自分の物語』だからである。ひょっとすると瞳さんの音楽活動の再開もそこと繋がっているのではないか。

 ■楠木新(くすのき・あらた) 1979年、京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。50歳から、勤務と並行して取材、執筆、講演に取り組む。2015年3月、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。人事・キャリアコンサルタント。著書に『人事部は見ている。』『左遷論』など多数。17年4月発行の『定年後』(中公新書)は25万部のベストセラー。

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