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【トップ直撃】自然の治癒力に未来を託す オークヴィレッジ・稲本正会長、作家目指すも親戚の“本職”から「やめたほうがいい」 (1/3ページ)

★オークヴィレッジ・稲本正会長(73)

 四十数年前、30歳を目前にした物理の研究者が、楢の木を材料にイギリスの「ロイヤルオーク」のような高級家具を作ろうと、「飛騨の匠」で知られる岐阜・高山へやってきた。病んだ近代文明を離れ、森林の自然治癒力に未来を託したいとの思いからだった。いま彼の造った工房と製品は経営者や母親たちから支持され、自然を愛する多くの人が彼の話に耳を傾ける。オークヴィレッジ会長、稲本正氏の挫折と挑戦-。(清丸惠三郎)

 ■楢の木で高級家具

 --飛騨高山で、受注生産中心の家具工房としてスタートしてから四十数年たちました

 「イギリスで高級家具の材料に用いられるオークを調べてみると、楢だと分かった。当時、1立方メートル8000円ほどで、この安い楢材を切り出し家具に加工して漆を塗れば、イギリス製家具のように高額で売れるはずだと。それで仲間と高山へやってきたのです」

 --大学では物理学専攻。それがなぜ

 「ある年、郷里の富山に帰った時、『東京は病んでいる』と強く思うようになり、対して『自然には治癒力がある』と気付かされた。20世紀の文明病に冒されている東京を出て、自然に返る生活ができないものかと」

 --仲間とまずは信州へ行くことに

 「武者小路実篤の『新しき村』のような晴耕雨読の生活ではすぐに行き詰まるだろうと。だとすれば木を育て、何かを作り出す技術を身に付けるのが一番いいと考えたのです。そこで長野県内の峠で、山小屋を仲間で建てることにしました。最後まで残ったのは5人でしたが、指導してくれた大工さんが『あんたたちは筋がいい。俺と組めば大町(市)一の工務店がつくれるぞ』って」

 --そこで、高山の高等技能専門学校(職業訓練校)に入学する

 「高山は『飛騨の匠』の故郷です。ここの技能専門学校に入り、最初半年は刃物の研ぎだけを教えられました。担当の秋松先生はまさに職人で、われわれの真剣度を疑っていたようでしたが、本気と分かると、8月のある日、『明日から毎日弁当を2つ持ってこい』と言い、朝6時から夜10時まで徹底的に仕込んでくれたのです」

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