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【住まいの処方銭】相続前の口座出金が可能に 葬式費用のトラブル回避に効果

 「父が亡くなって銀行からお金が下ろせず、葬式代が払えない!」

 これを避けるために、今年7月から、遺産分割前に、他の相続人の同意なしに、亡くなった人の預金口座から一定のお金を引き出せるようになる。

 金額は、「相続開始時(亡くなったとき)の預貯金額×3分の1×仮払いを求める相続人の法定相続分」で、上限は「一つの金融機関あたり150万円」までだ。相続人が子供2人で、A銀行に450万円あれば、各自が75万円を、1200万円あれば150万円まで引き出せる。

 現在、金融機関は口座の持ち主が亡くなったことを知ると、家族でもお金を下せないよう口座を凍結する。誰かが、葬式費用などを立て替えた場合、相続時にもめることがあった。

 ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所(東京都港区)の好川久治弁護士は「この制度により、急に費用が必要となったときに助かる例が増える」と評価する。ただし、「亡くなった後に引き出した分は、本人が取得したとみなされ、遺産分割時に清算される」とも。葬式などの領収書は残そう。

 また、「預金引き出し後、亡くなった人に預貯金以上の借金があった場合には、相続放棄ができなくなる可能性もゼロではない」とも指摘する。こうなると話は複雑だ。親の借金を把握するのも難しいが、専門家に相談した方がいい。

 ところで、好川弁護士は「相続にまつわる相談が増えている」と話す。たとえば、兄弟のなかで同居する子供が、高齢の親の通帳やお金を管理し、親に自分に有利な遺言を作らせる。別居の兄弟はそのことを知らず、遺産分割時にもめる、など…。これらは今回の法改正では何も変わらない。

 このため、好川弁護士は「財産管理は他人まかせにせず、早めに遺言を準備し、相続人にも説明しておくのがよい」とアドバイスしている。(不動産・住生活ライター 高田七穂)

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