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【定年後の居場所】2度の出向人事を糧に64歳で博士号 生命保険会社→不動産会社で鑑定士合格→芸術法人で学芸員 (2/2ページ)

 また、もう1つの彼の夢は、不動産鑑定士の資格を獲得することである。資格取得には、実務経験が必要なので、現在は不動産の鑑定会社で働いている。週に3日、若い人に混じってパソコンの前で細かい鑑定評価の仕事をしている。

 振り返ってみると、今までの取り組みのきっかけは思いがけない異動であったという。初めは相当落ち込んだが、人生何が良くて、何が悪いのかはわからない。むしろ、転勤とか出向は働き方や生き方を切り替えるチャンスであって、前向きに何ができるのかを考えることが大切だと彼は言う。

 昨今の働き方改革では、副業の問題がよく取り上げられるが、副業だけではなく、将来のために資格を取得するとか、趣味を生かす、ボランティアや地域活動に取り組むといったように実際には幅広く多様である。N氏のように学び直しを通して新たな取り組みを始めるという手もあるのだ。

 また、仕事と資格の勉学、仕事と異業種交流会の主催者、仕事と大学院での研究、定年後は博士論文と資格を取るための仕事など、2つのことを並行して取り組んでいるのも興味深いところだ。充実した生活を送るポイントかもしれない。まさに「合わせ技一本!」と言えるだろう。

 ■楠木新(くすのき・あらた) 1979年、京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。50歳から勤務と並行して取材、執筆に取り組む。2015年3月、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。人事・キャリアコンサルタント。25万部を超えるベストセラーになった『定年後』(中公新書)など著書多数。19年2月に『会社に使われる人 会社を使う人』(角川新書)を出版。

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