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【定年後の居場所】「仕事での自立」から「地域での自立」へ 認知症サポーター養成講座で知る現実 (1/2ページ)

 ある地方自治体が実施している「認知症サポーター養成講座」を受講した。認知症サポーターとは、認知症の人や家族を見守る「応援者」のこと。何か特別なことをする義務や役割があるのではなく、日常生活のなかで自分ができる見守りや声掛けなどをできる範囲でやっていこう、という厚生労働省も勧めている取り組みだ。

 資料に基づいて認知症に対する一般的な研修が行われた後に、妻が若年性認知症になった75歳の男性の体験談が語られた。彼が50代後半の時に妻が発症した。「定年後は海外旅行に行こうか」と2人で語り合った時からしばらくしてから異変が生じたそうだ。

 それ以降は片時も妻から目が離せない状況になった。1人で外出し、迷子になって家に帰ることができないことが何度もあった。その度に警察に届け出たり、近所の人や支援者に声をかけて一緒に探し回ったりすることもあったそうだ。

 発症の前後の時期に、妻は証券会社と取引をしていて相当な額の損失を抱えていたことも分かった。契約はすべて解約したという。

 彼は「親の介護であれば諦めがつくが、配偶者の場合はいつ終わるか分からない。年上の自分が妻に介護してもらうつもりだったが、想定と全く違った状況になった」と語っていた。

 歩くのが脳の病気にはよいということを聞いて妻と一緒に散歩するのが現在の日課だという。配偶者よりも自分の方が年上であっても病に倒れたり、亡くなる順番は決まっているわけではない。この男性のように妻が若年性認知症になると、予期せずに自分が介護する側の立場になることがあるのだ。

 体験談の中で彼はこの地域に住んでいて本当によかったと話していた。病院や役所に一緒に付き添ってくれるボランティアもいる。また同様な境遇にある者同士が集える場もある。このような講座で自分の体験を皆さんに語る機会があることも自分の支えになっているという。控えめながら率直に語る彼の話を聞いて、その場にいた誰もが身につまされる思いだった。

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