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【日本の元気 山根一眞】古文書は今も読むことができるが… 1000年後まで残せない「デジタル記録」 (1/2ページ)

 仕事場を引っ越すための大整理に追われているが、懐かしい情報関連物が出てきて手が止まることが多い。その一つが、現在のデジカメなどで広く使われているSDカードの2倍の大きさの「スマートメディア」だ。

 1998年に確か10万円で買った当時の最新デジカメは画素数が150万(現在のデジカメの10分の1以下)にすぎなかったが、まずまずきれいな写真に満足していた(小惑星探査機「はやぶさ2」搭載カメラの解像度と同程度)。その記録媒体がスマートメディアだった。

 私はこの年、カザフスタン共和国・バイコヌール宇宙基地での国際宇宙ステーションの第1回資材打ち上げという歴史的瞬間の取材に、このデジカメを持参した。ところが撮影後、全写真が読み出せなくなり、泣くに泣けない無念さを味わった。

 そのスマートメディアを処分できず保存してあったのだ。日本のメーカーグループが開発したスマートメディアはトラブル多発で有名だったと知ったのは後のことだった。私は、出てきたスマートメディアに、デジタルメディアの脆弱(ぜいじゃく)性をあらためて実感した。

 同様のデータ損失を実は数多く経験してきた。片付け中にやはり出てきた数十台のハードディスクは、いずれも読み取り不能となったものだった。ハードディスクやSSD(シリコンディスク)の信頼性は最近向上したとはいうものの、この1-2年でも何度か読み取り不能となり茫然(ぼうぜん)とした経験をしている。

 デジタルメディアとはそういうものだという前提で使うべきだが、うっかりバックアップをとっていなかった時にかぎってデータ損失は起こる。ファイリングキャビネット数百個分の紙資料を一瞬で失うような絶望に陥る。人生と仕事の一部が奪われるのに等しいが、デジタルメディアのメーカーにはその損害補償の義務はない。

 そのため、仕事やプライべートの全データを、外部の「クラウドストレージ」に保存しておく手段が普及してきた。だが私は、有料契約していた複数の大手米国企業の有償ストレージサービスから、突然、「サービス終了のため〇〇日後にデータは消滅します」という通知を受けた経験がある。「クラウド、お前もか」と愕然とした。

 そこで、クラウドストレージ依存を捨て、重要データは数台のハードディスクに分散保存することにした。だが、多くのユーザーが「ハードディスクやSSDは3~5年で読み取り不能が始まる宿命」と経験を語っている(私も同意見)。

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