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【シニアライフよろず相談室】介護(2) 母を無視、父とは口論、妻と離婚でボロボロに… 素直に相談できていれば (1/2ページ)

 先週に引き続き、「NPO法人札幌高齢者住まいのサポートセンター」「一般社団法人シニアライフサポート協会」の代表、小番一弘氏に話を聞く。今回は、小番氏自身の介護体験について具体的に語ってもらう。介護離職の現実とは-。

 私が介護離職をし、東京から両親のいる札幌の実家に戻ってみると、母の認知症は想像以上に進んでいました。5分おきに母親は「私のカバンはどこ?」「お父さんはどこに行ったの?」と繰り返します。言葉を返すことも面倒になり、しばらくするとだんだん母親の問いかけを無視するようになっていきました。そういう母親を怒鳴り続ける父親ともよく口論になりました。

 これまで介護の経験はなく、掃除や炊事、洗濯といった家事も満足にできない自分に対する戸惑いといらだちが募るようになり、「この現実からとにかく逃避したい…」という気持ちに支配されるようになったのは、介護を始めてわりとすぐのことでした。

 「介護や認知症についての専門知識をつければ、少しは楽になれるかも?」。そんな風に考え、ヘルパー2級の資格を取ってみたものの、現実は教科書通りにならないことだらけでした。

 どうしたら良いのかを誰かに尋ねたいけれど、今の自分の状態があまりに惨めに思え、プライドが邪魔をして素直に相談できません。

 長年連れ添った妻とは離婚するに至りました。経済的困窮や介護に伴う長期の夫婦別居、介護に対する意見の食い違いなどが背景でした。実家の近所にある高齢者住宅の夜勤の仕事を見つけ、生計をつなぐ日々。肉体的にも精神的にもボロボロになっていました。

 もし、11年前に戻れたら…。現在は持ち合わせている知識、情報、ネットワーク、社会資源などを当時から知っていて、うまく活用できていたら。もう少し上手な介護ができたかもしれません。少なくとも、介護離職をする必要はなかったと思います。それに伴う家族間に起きた不幸も回避できたはずです。

 現在、政府は「介護離職ゼロ」を掲げています。ですが、その実現のためには、介護に直面する皆さんがお悩みを気軽に何でも相談できるインフラづくりが重要になってきます。

 私どもの相談窓口がその一助となれば、こんなにうれしいことはありません。(一般社団法人シニアライフサポート協会)

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