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【榊淳司 マンション業界の秘密】デベロッパーが「誠意」示さなければ…建て替えは都心の一等地でも失敗する! (2/2ページ)

 ところが、このデベが示した計画案はかなり杜撰(ずさん)なものであることが発覚する。まず、現状住戸の資産価値評価がかなり低めであった。さらに現状住戸の面積は内法(うちのり)で算出しておきながら、新住戸はそれよりも実質的に狭くなってしまう壁芯(へきしん)で計算してあった。

 こういう子供だましのような手法が露見すると、提案者の信頼は一気に低下する。

 焦ったこのデベは、区分所有者の中でかつてリーダー格だった有名人数人を味方に付けて、多数派工作を始めた。そういった露骨な行為が、良識を持った区分所有者の目には著しく奇異に映った。

 一部の区分所有者が他のデベからの提案を取ることを模索すると、業界のリーダーであることにモノを言わせて同業他社に圧力をかけた。

 そうこうするうちに、怪しげな個人ブローカーから反対派所有者に突然電話が掛かってきて、「ご希望の金額で買い取ります」とささやかれたりもした。

 こういった一連の失策によって、このデベは一部区分所有者たちの信頼をすっかり失うことになる。今では反対派の区分所有者からはいくつもの訴訟が起こされ、話し合いは膠着状態だ。

 パートナーに名乗りを上げたデベが、一流企業であることを鼻にかけ、誠意を示さなかったのが何よりの原因。地上げの基本を忘れた典型的な失敗例である。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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