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【田村秀男 お金は知っている】菅首相よ、都合良い“役人の数字”を信用するな! 携帯料金引き下げの「ゼロサム」とは (1/2ページ)

 話は少し前にさかのぼるが、9月12日の自民党総裁候補3人の日本記者クラブでの討論会終了後、菅義偉首相のライバル候補のスタッフから、筆者に電話がかかってきた。

 「田村さん、菅さんは首相になっても長くは持たないぞ。解散、総選挙は近い。だって、討論会では菅さんしきりに役人が書いたとおぼしきメモに目をやりながら話していた。これでは予算委員会質疑を乗り切れないじゃないか、とみんな言っている」

 経済ジャーナリストとしての視点は「スガノミクス」にある。「アベノミクスの前進」を標語とし、行政のデジタル化、携帯料金の引き下げなどによる規制改革、さらに最低賃金の引き上げによって経済の再生を実現するとしている。

 デジタル化は新型コロナウイルスが長期化しそうな情勢の下、迅速に推進すべきで、とりわけ遅れや混乱が目立つ行政部門に檄を飛ばすのは大いに結構だ。だが、こと携帯料金の引き下げや賃上げで経済成長を目指すというのは、もっともらしく聞こえても、それこそ小賢しい官僚の作文の域を出ないのではないだろうか。

 正しくは順序が逆なのだ。つまり、景気を力強い回復軌道にまず乗せて経済成長を持続させることが重要で、規制改革や賃上げはその後に続くべき課題のはずである。

 ちなみに、携帯料金の引き下げの効果はいかほどか。

 第一生命経済研究所首席エコノミスト、永濱利廣さんの試算によれば、1割引き下げで1人当たり5300円以上、家計全体で6700億円以上の負担減になるという。確かにスマホを使う時間が長い若者には恩恵があり、娘さんたちはデパートで高級化粧品購入を増やすかもしれない。しかし、経済のマイナス成長が続く中では「ゼロサム」になるだけだ。

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