記事詳細

【定年後の居場所】本の出版、まずは「読み手ファーストの姿勢」が重要 書店通いなどでニーズ把握を (2/2ページ)

 私が相談を受けた時によく感じるのは、高い専門性があれば多くの人に読んでもらえると勘違いしている人が少なくないことだ。もちろん専門性は大事なのであるが、お金を出して雑誌や本を買う読者のことを考えると、まずは読み手ファーストでなければならない。お客さんに喜んでもらえるかどうか、お役に立てるかどうかがポイントなのだ。そんなことは当たり前ではないかと思うかもしれない。しかし実際には、専門的に取り組んだことを主張したい、自分の知識や経験を披瀝(ひれき)したいという方向に傾きがちな人は多い。

 あるビジネス誌の編集長は、掲載を希望する原稿を受け取ることは日常茶飯事だそうだ。しかし、読者にまで考えが及んでいないので高い専門性があっても掲載に至らないケースが大半だと話していた。

 私も会社員生活が長かったので、当初は自分中心に考えてしまうきらいがあったが、それではうまくいかない。やはり読み手の欲求に応えることだ。

 それではどうすればよいのか? 人によってやり方は違うだろうが、私は、ほぼ毎日会社帰りに梅田の紀伊国屋書店に立ち寄っていた。そこで自分と同様なテーマを扱った本が並んでいる棚を常に確認していた。毎日通っていると、棚の状況やその変化から「どのような本が、読者に求められているのか」がおのずと見えてきた。先ほどの初めて本を書いた2人も、どこかで書き手主体から読み手ファーストへの姿勢に転換したのではないかと推測している。

 ■楠木新(くすのき・あらた) 1979年、京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。50歳から勤務と並行して取材、執筆に取り組む。2015年3月、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。人事・キャリアコンサルタント。25万部を超えるベストセラーになった『定年後』(中公新書)など著書多数。20年1月に『定年後のお金』(中公新書)を出版。

関連ニュース