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【経済快説】健全な投資だけで株価は上がっているわけではない! 金融各社の巨額損失…いかにもバブル的な「膨らみすぎた投資」 (2/2ページ)

 信用取引やヘッジファンドでは、自己資金以上に株式を買う場合に通常資金を借りて株を買うが、TRSでは金融機関が株式に投資したのと同様の損益を受け渡す。その代わりに金融機関に対して、資金のコスト相当額と手数料を支払うことになる。金融機関側は、取引相手が破綻しなければ安定的に収入が得られるが、取引の実態は借り入れで株式を買うのと変わらない。アルケゴス側から見ると、自己資金以上に投資を膨らませることができること以外に、自分の名義を出さずに株式を大量取得したのと同様の投資ができることが魅力的だった。

 問題は、同社の投資がうまく行かなかったことと、同社が複数の金融機関と取引していて、個々の金融機関の側ではアルケゴスの取引の全体像を把握できていなかったらしいことだ。多くの金融機関が気づいたら巻き込まれていた。

 同種の取引は他の運用会社・金融機関にもあるはずだが、本件自体は個別の問題であり、かつてのサブプライム住宅ローン問題のように連鎖して金融危機を招く性質のものではない。従って、直ちに警戒を要するわけではない。

 だが、いかにもバブル的な「膨らみすぎた投資」ではある。TRS以外にもSPACと称する企業買収を目的とする「空箱」を上場して資金調達する仕組みもある。金融緩和状態を利用する金融業者の試みは昔も今も際限がない。健全な投資だけで株価が上がっているわけではないことを知っておこう。(経済評論家・山崎元)

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