中国経済の減速懸念が高まる中、日本企業が中国以外の生産拠点や投資先を東南アジア諸国連合(ASEAN)で模索する動きが広まっている。中国での人件費高騰や尖閣諸島(沖縄県)の国有化で悪化した日中関係も背景だが、経済成長に伴うASEANの消費市場拡大に期待する動きも活発だ。リスク分散を目指し、中国と別の国の組み合わせた「チャイナプラスワン」が流行したが、“中国以外”をASEANで探ろうという方向に向かっている。
■人件費が倍に
中国依存からの脱却では、すでに衣料関係などの企業が生産の足場を他のアジア諸国へ分散し始めている。
「洋服の青山」を展開する青山商事の子会社は今年2月、インドネシア中部のジャワ州スマラン郊外でスーツ製造の工場建設を開始した。
青山商事は現状70%の中国での生産比率を段階的に50%程度にまで引き下げ、ASEANなどに生産拠点を分散させる方針だ。「尖閣諸島(沖縄県石垣市)での日中の摩擦が高まる以前から、人件費の高騰、中国一極集中のリスクは認識していた」(同社広報)という。
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング、無印良品の良品計画も中国以外での生産規模拡大を図っている。労働力を集中させる産業で、こうした動きが広がりそうだ。
中国は安価な労働力を背景に、2004年から実質経済成長率(GDP成長率)10%という経済成長を示した。だが、製造業の1人当たり賃金はこの5年ほどで倍近くに跳ね上がり、かつて「世界の工場」ともてはやされた進出メリットは薄れている。
人件費の点では、中国より安いミャンマーの注目度が高い。日本貿易振興機構(ジェトロ)の2012年調査を基に計算すると、ミャンマーでの賃金(製造業)は月平均1人当たり約92ドル(約7300円)で、中国の6分の1程度。すでにクボタ、兼松などが進出しており、国際物流の阪急阪神エクスプレス(大阪市)はアパレルや工業製品の輸送需要を見込み、7月に現地法人を設立する。