ハウステンボス・澤田秀雄社長 大胆経営が奏功して再建軌道に

★ハウステンボス・澤田秀雄社長(62)

2013.05.14


ハウステンボス・澤田秀雄社長【拡大】

 長年赤字に苦しんできた長崎のテーマパーク「ハウステンボス」。大手旅行会社HISの創業会長である澤田秀雄氏が再建に乗り込んで丸3年、順調に再建は軌道に乗りつつある。債権放棄、佐世保市の税金優遇などもあるが、大胆な澤田流経営が功を奏していることも事実。澤田氏は「設備の更新、新規のイベントなど投資を続ける」としつつ、次なる目標は「この地を観光ビジネスにすること」と語る。その真意は−。

 ──2010年4月に出資して4年目。順調に経営改善は進んでいる

 「まだまだ経営面全体で改良の余地はあり、自己採点すれば57点というところだ。ただ数字的には11年9月期に営業収支が黒字化して、前期、そして今中間期と順調に収益力は強化されている。今期は通期で50億から60億円の営業黒字を見込んでおり、来期には100億円台に乗せられるだろう」

 ──東京ディズニーリゾート(TDR)はもちろん、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に比べても圧倒的に条件が悪い。黒字化できたのはなぜか

 「建物や環境などはいいが、全国を相手にするにしてはアクセスが悪いし、市場規模も小さい。ぼくならこの地に造らなかった。加えてイベント力も弱いし、キャラクターも持っていない。だから18年間黒字化できなかったのも無理はない。で、まずやったのは広い園内をファミリー、シニア、若いカップル対象と3エリアに大別し、特徴づけした。例えばシニアのエリアでは花をよりゆっくり見られるとかね。同時にイベントやショーも次々に導入した」

 「集客に力を入れる一方、コスト削減も大胆に行った。園内が東京ディズニーランドの1・6倍もあり、メンテナンスだけで大変な経費がかかる。だから思い切って3分の1をフリーゾーンにした。入場料を取らないから仮に閑散としていても、ハウステンボスのイメージに悪影響を与えない。また従業員には『もっと明るく元気に、そして今までの1・2倍のスピードで働こう』と言い続けてきた。平均年齢が40歳を超えているので、まだ意識改革にはばらつきがあるが」

 ──イベントと言えば、初夏には「100万本のバラ」、冬には1000万個のLEDでライトアップする「光の王国」と新しい目玉が生まれている

 「ここではTDRのように何百億円もアトラクションにお金をかけることはできない。そこでイベントやショーに関しては日本一か、東洋一、世界一…でなければ他にないものをという考えでやってきた。バラはもともとここの名物だったが、どこにも負けない数を植えることで特徴を出した。バラの時期の入園者はここ3年間で17万、20万、昨年は30万人を超えた」

 「また、寒いので冬季の集客は難しいと社員も諦めていたが、フランスのリヨンで行われるライトアップには400万もの人が集まると聞いて見に行き、即導入しようと決めた。お客さまは一度来てつまらないと思われれば2度と来られない。試行錯誤だが、そうならないように日々努力している」

 ──園内を歩くとまだまだ課題も目につく。今後、どういう方向へハウステンボスを持っていくつもりか

 「確かに建物の老朽化なども進んでいる。改築などを含めて、パークの充実をこれからも進めていくし、投資も続ける。ただ最終的にはここを観光ビジネス都市にしたいと考えている。近々、園内に省電力・省エネルギーのスマートハウスが完成する。ぼく自身がテストで住むことにしており、そこで蓄積・開発した技術を生かし、来年中にはスマートホテルを建てる計画だ。電力を含め、光熱費が従来の半分か3分の1、多くの作業はヒューマンロボットがこなし、どうしてもというところだけが人手。この世界一生産性の高いホテルを、海外を含めて普及させるための拠点にハウステンボスをしたいと考えている」 (清丸惠三郎)

■人生の90%以上は運/人を知ることが大事

 【発想】

 「ユニークな発想はどこから来るのか」との質問に、「特に訓練したわけではない。ただ1つ言えるのは多くの情報を持っていることだろう。本を読むことも好きだし」と答えた上で、こう付け加える。

 「学生時代、世界を旅したことに加え、旅行業の世界に入り、全世界を回った。(さまざまな価値観を持つ人々と交わって)多様な視野でものを見ることを覚えたことが大きいと思う」

 【人生における運とは】

 「人生の90%以上は運だ。運は大切にしているとよくなるし、いい加減にしていると悪くなる」と語る。

 「例えば人柄のいい、前向きな人と出会い、その人と付き合えば裏切られることもないし、時にはビジネス面で応援してもらえる場合もある。少なくとも前向きに生きていける。ところが後ろ向きで消極的な人と付き合っていると、気持ちも落ち込むし、何かやろうと意欲が湧いてきても踏ん切りがつかない。人生は努力だという人もいるけれど、やはりより運が大きいと思う」

 【失敗することの意味】

 「失敗には2種類ある。1つは致命傷となるもの。まさにこれは命取りになる。もう1つは『失敗は成功の母』と言われるように次のチャレンジの原動力になるもの。私自身、ドイツから帰ってきて、最初は毛皮の輸入を手がけたがうまくいかなかった。あのことがなければ今のHISはなかった。運もあるが、こうした変化の激しい時代だから、次々にチャレンジするしかない。なぜ失敗したか考えながら、次に挑戦することが大切だ」

 【本は人間学の宝庫】

 「企業も国家もすべて人でできている。(リーダーは)人を知ることが大事」と語る。

 人について学んだ書として、山岡荘八の『徳川家康』全26巻。次に司馬遷の『史記』。そして安岡正篤と中村天風の著作を挙げる。その上で「本ですべてを学ぶことはできないが、本は人間の宝庫であり、学ぶことは多い」と付け加える。

 【会社メモ】長崎県佐世保市にあるテーマパーク「ハウステンボス」(オランダ語で「森の中の家」)の運営会社。「長崎でオランダを体験する」をテーマに1992年に開業したが赤字が続き、2010年大手旅行会社、HISが出資して澤田氏が社長に就任、以来再建の陣頭指揮に当たる。佐世保市の税金優遇等に加え、新たなイベント、ショーなどの導入により、入場者数が増え、11年9月期には設立以来初の営業黒字化を達成した。12年9月期は入場者数191万人超、売上高152億円超。資本金15億円。従業員1400人(パート等を含む)。今後は「観光ビジネス都市」を目指す。

 ■さわだ・ひでお エイチ・アイ・エス(HIS)の創業会長で日本を代表する起業家。1951年大阪市生まれの62歳。工業高校卒業後、旧・西ドイツのマインツ大学に留学。帰国後の80年、HISの前身、インターナショナルツアーズを設立。90年にはスカイマークエアラインズ(現・スカイマーク)、その後、証券・銀行業務にも進出した。2010年、請われて苦境にあったハウステンボスの再建に乗り出し、社長に就任。黒字化を達成して、その経営手腕に再び注目が集まる。

 

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