引き上げ決定?の消費税 首相は財務官僚に従うだけでいいのか

2013.09.26

連載:経済快説

 大新聞では、消費税率を来年度から8%に引き上げることが既に決まった事実のように報じられている。

 先日は、社説で消費税率引き上げへの慎重論を述べていた『読売新聞』が、安倍晋三首相が税率を引き上げる「意向を固めた」と報じた。その後、『朝日新聞』も「消費税 来年4月8%」、「安倍首相が決断」とでかでかと1面トップで報じた。

 残念ながら、両紙とも、何を根拠にそうだと判断したのかが書かれていない半人前の報道だが、これが日本の公開情報なのだから、仕方がない。

 それでも分かるのは、誰かがこれらの記事を「書かせた」ということだ。読売・朝日がいかに偉くとも、根拠の全くない記事は書けない。首相側近の人物なり、関連する担当と責任を持つ官僚なりからの情報(非公式な談話で十分らしいが)がなければ記事は書けぬ。本件を主管するのは財務省だから、財務省の官僚ないしは、関係者が、大新聞に情報を流して、記事を書かせていると考えるのが普通の推測だろう。

 もともと民主党の選挙公約に反する消費税率の引き上げを、与野党の3党合意という無理なスキームをアレンジしてまで決めた消費税率の引き上げだから、財務省としては、安倍首相を羽交い締めにしてでも、消費税率の引き上げを「今」決めたいのだろう。

 しかし、報道によると、消費税率の引き上げを決める一方で、公共事業などの補正予算(数兆円規模)、震災復興目的の法人税の上乗せの早期打ち切り、賃上げ企業の法人税軽減、住宅ローン減税−など、消費税率引き上げによって生じる景気回復やマイルドな物価上昇へのマイナス要因を相殺するための財政政策が並んでいる。

 財政再建が緊急を要する課題で、「今」増税が必要なら、消費税率を引き上げる一方で、財政収支を悪化させる措置を同時に実行することはつじつまが合わない。財務省も、財政に緊急性のある心配を持っているわけではないことが分かる。

 また、金融緩和→円安・株高・土地高→景気拡大→失業減→賃金上昇→物価上昇の定着、という「アベノミクス」の波及経路を考えると、賃金上昇の遅れというよりも、勤労者の実質的な購買力低下をサポートして、消費を下支えすることが重要だ。消費税率引き上げのマイナス効果を最も的確に相殺する最善の政策は、皮肉なことに消費税率の引き下げなのだ。つまり、今、消費税率の引き上げは決めない方がいいということ。

 官僚に従って消費税率を上げる方が安倍政権は長持ちするのかもしれない。だが、安倍氏個人はそれでいいのだろうか。 (経済評論家・山崎元)

 

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