吉野家「牛すき鍋膳」 「直火でごゆっくり」“蓋を開ければ”新たなニーズ

2014.08.27


牛すき膳【拡大】

 今年4月、吉野家ホールディングスは、2月期決算で2年ぶりの黒字回復を発表した。売上高が前年比5・4%増の1734億円と4年ぶりの増収、純損益は6億円の黒字となり、大手牛丼3社の中で、他の2社を圧倒した。

 その原動力となったのは、火のついたコンロに鍋をのせて提供される“本格鍋料理”「牛すき鍋膳」だ。昨年12月5日に発売して、26日で300万食。今年2月6日で700万食を突破する空前のヒット(牛丼を除く)となる。

 吉野家の鍋メニューは、2004年、BSE騒動によるアメリカ産牛肉輸入禁止を受けて牛丼の発売を休止したときに、代替えメニューの一つとして発売された「牛鉄鍋膳」に始まる。その後、ブラッシュアップしながら3種類の鍋メニューが発売されてきた。

 「牛すき鍋膳」は「たっぷりの牛肉と野菜を使った鍋」をコンセプトに、1年前から開発が始まった。700円で出してもおかしくないボリュームと味、との提案があったものの、吉野家の客単価から580円(4月から590円)とされた。「700円のクオリティーを580円で実現する」(企画本部広報担当・吉村唐仙さん)という相矛盾した課題に、開発陣は苦労に苦労を重ねる。それでも580円という価格は「鰻を除き、吉野家史上最も高い」(同)ため、一部には懸念の声もあった。

 吉野家といえば「うまい・やすい・はやい」だが、「牛すき鍋膳」は「直火を使い、ごゆっくりお召し上がりください」を打ち出した。CMでも人気芸人が「火ついてるやん」と直火に驚き、話題となった。

 直火を使うことも「ごゆっくり」も初めてのこと。厨房の手間がかかる上に確実に客の回転率は落ちるため、客数の減少が懸念された。その対策として、一部の店舗ではランチタイムの販売を見合わせたほどだった。

 しかし、蓋を開ければ鍋のニーズは夜に多く、トータル客数は増加。さらに「ご年配のお客さま、女性、ファミリー層というこれまで吉野家であまり見かけなかった」(同)層を取り込むことに成功する。具材を火にかけた状態で提供し、時間をかけてゆっくり食べたいという客層が、吉野家に来るようになったのだ。

 吉野家では、全国展開を行う前に数十店規模で検証を行う。この段階で、吉野家の社員も自主的に試食、その意見をフィードバックし、さらに商品を磨いていくという取り組みがある。「牛すき鍋膳」では客の反応がよかったため、途中から、全国発売に向けて全社的な熱気に変わった。何度か試食した吉村さんも、最終発売の味に「これはヒットすると確信した」という。

 「100年以上、牛丼単品を磨き上げながら販売してきた文化」(同)であり、時代が変わって多メニューになっても、「牛鉄鍋膳」から始まった“鍋メニュー”を大切に磨き上げてきた蓄積が、10年を経て新たな大ヒットを生んだといえるかもしれない。この秋、再販売が予定されている。 (村上信夫)

 

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