1967(昭和42)年に発売された森永製菓の「チョコボール」は、年間70億円規模の売り上げを誇る、子供向けチョコレートのロングセラーだ。
「ハイクラウンチョコレート」の大ヒットで大人向けチョコレート市場を制した森永製菓は、65(昭和40)年、子供向け市場をつかむために、人気アニメ『宇宙少年ソラン』のキャラクター、チャッピーというリスを描いた「チョコレートボール」を発売するが、番組終了とともに販売終了した。
これをパワーアップし、67年に「チョコボール」(当初は「チョコレートボール」、69年「チョコボール」と改称)が発売される。工夫は、チョコレートの味だけではなく「パッケージのチョコの取り出し口をクチバシ状にし、開けると目が現れ、鳥のイメージになるようにしたこととキョロちゃんのキャラクター」(マーケティング本部菓子食品マーケティング部チョコレートカテゴリー担当の野条理恵さん)という。
変化の激しい子供市場でロングセラーを続けてきた理由について、野条さんは「いろんな食感が楽しめるというチョコボールの基本を守り、キョロちゃんとおもちゃのカンヅメによる楽しさを提供し続けてきた」ことを挙げる。
今に続くキャンペーン「おもちゃのカンヅメ」の前身、漫画のミニ本などを詰めた「まんがのカンヅメ」も登場する。2年後には「おもちゃのカンヅメ」に変わった。第1号のカンヅメの中身は、キーホルダーやミニそろばんなどだった。これにより「パッケージを開けるときに思わずクチバシを見てしまうというワクワクドキドキが加わった」(同)。
集めた記憶のある読者も多いと思うが、金のクチバシ1枚または銀のクチバシ5枚は、当初からだった。野条さんによれば、カンヅメは約2年ごとに変え、毎月1万人ぐらいが当たっているという。
同社ではリニューアルを「活性化」と呼ぶが、最近はおよそ年に春夏2回、消費者が気づかないぐらい、少しずつ変化させている。そのためにグループインタビュー、ヒアリング、アンケートを徹底的に繰り返している。
かつては、菓子も少なく「カンヅメが当たる子供のお菓子」というだけで注目されたが、今は子供も情報量があふれているので、「こまめにコミュニケーションしないとすぐ埋もれてしまう」(野条さん)という。この夏、「進撃の巨人」とコラボを行ったように、ネットで話題になるような発信も必要だ。
時代に合わせ、そしてその少しだけ先を刺激する。これが、ロングセラーの理由のようだ。
今年6月、「チョコボール」に郷愁を持つ大人たちのために、「大人に贅沢チョコボール」が発売された。 (村上信夫)