大手家電の元部長が「画家」に転身 世界を描き歩き、エッセーも

2015.08.21


ササッと東京駅のスケッチをする寺田さん【拡大】

 水彩画家&エッセイストの寺田みのるさん(68)に、東京駅八重洲口の喫茶店で会った。真剣な表情でスケッチをする写真しか見ていないので、気難しい芸術家を想像していた。ところが、関西人らしく、冗談をぽんぽん飛ばす気さくな人だった。

 月刊「毎日夫人」(毎日新聞社)に連載中の「あなたと歩きたい街」は、ちょうど10年。しゃれた都会的なセンスの絵もさることながら、軽妙なエッセーを楽しみにしている読者も多い。

 「読者は中高年の女性が多いから、恋人にラブレターを出すつもりで書いてます」

 滋賀県大津市で生まれ育った。16歳から三洋電機の工場で働き、たたき上げで出世した苦労人。量販店のヘルパーで断トツの成績を収め、23歳のとき大阪本社に採用された。冷蔵庫や洗濯機など白もの家電の分野で実力を発揮し、商品企画部長を経験した。

 画家は子供の頃からの夢。40代半ばで会社を辞めようと思ったが、「家内に『何考えてんの』と怒られて」断念。結婚して子供もいたので勝手なことはできなかった。51歳のとき早期退職優遇制度ができたのを機に、改めて「退職金は割り増しでこれだけ入る。年金までには11年あるが、辞めて画家になる」と宣言。妻は「ええんと違うか」と理解を示した。

 画家が個展を開いたら必ず売れるとはかぎらないが、寺田さんは必ず売れる。

 「個展で食いつなごうと思っていた。年金は全部家内に渡して、自分の活動資金は原稿料とか講演など細々した仕事で何とかなっています」

 旅行代理店の企画で旅先の風景を描くツアーがある。同行講師の寺田さんは、もちろん旅費はタダ。海外旅行をしてお金も稼げるのだから、うらやましい限り。「海外は67〜68カ国ぐらい行ってます」

 神戸や大阪、京都、東京など各地でスケッチ教室を開いている。教え方は丁寧で的確と、生徒の評判もいい。地元大津市の福祉団体や環境団体などの要職に就き、ボランティア活動にも熱心に取り組む。2013年に大津市文化賞を受賞した。

 「寺田さん、めっちゃ楽しいでしょう」とよくいわれる。実際会って話を聞いていると、そんな感じを受ける。「そんなことないですよ。楽しそうにしてるだけで、これは(親指と人差し指を丸めて)ないしね。風呂屋のおじさんと同じで、ゆうだけや」と呵々大笑。

 ■大宮知信(おおみや・とものぶ) ノンフィクション・ライター。1948年、茨城県生まれ。中学卒業後、東京下町のネジ販売会社に集団就職。ギター流し、週刊誌編集者など二十数回の転職を繰り返し、現在に至る。政治、経済、社会問題など幅広い分野で執筆。『平山郁夫の真実』(新講社)『死ぬのにいくらかかるか!』(祥伝社)など著書多数。

 

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