自閉症の子供の未来見据え 元出版営業ウーマンが起業

2015.09.25


日本に数台しかない高性能の焙煎機を前に張り切る白羽さん【拡大】

 東京の下町、都営浅草線蔵前駅前で、自家焙煎のコーヒー豆を売る店を始めた女性がいる。喫茶店ではなく、なぜコーヒー豆専門店なのか、気になるので行ってみた。

 「お客さんが長く滞留すると、子供たちを学校に迎えに行くことが難しくなるので、こういう店がいいだろうという結論に達したんです」と店主の白羽玲子さん(43)。

 大日本印刷に7年間、IT系出版社の翔泳社に13年間、合計20年間の会社員生活を送った。一貫してBtoB(企業間の商取引)の営業に従事。在職中に結婚し、男の子を2人出産した。

 会社員生活に不満はなかったが「下の子が3歳の時に自閉症の診断を受けて」退職。フルタイムで働くのは困難だったため、住まいがある地元で起業を決意した。

 独立にはもう一つ理由がある。同じ頃、母親が脳内出血で急死したことだ。「人間いつ死ぬかわからない。順番からいえば親の私が先に死ぬわけで、将来的に自閉症とか障害のある子供ができる仕事で、手に職が残り、彼らの収入になることができたらいいなと思ってコーヒー屋にしたんです」

 子供に残せるものは店と焙煎の技術だ。創業すると決めてから、台東区が主催する起業セミナー「創業塾」に参加して勉強。昨年5月、「焙煎処 縁の木」を開業した。健常者も障害のある子も一緒に働いて「縁がつながる木に」という思いを込めた。

 日本に数台しかない焙煎機を導入。焙煎の具合を数値化できるこの機械が、高品質の豆を安定的に提供するだけでなく、こだわりが強い次男のためにもなる。「少量ずつ焼いて同じ作業を何度も繰り返す仕事ですから、知的障害のある人に向いているんです」

 ブレンドが7種類、国別の豆を20種類用意している。いま一番力を入れているのは企業とのコラボ。オリジナル・ブレンドでノベルティ(景品)を作るビジネス。すでに売り上げの3分の1は、このBtoB。今後はその比率を5割に増やしていきたいという。

 開業して1年4カ月たった。かなり売り上げを上げたつもりでも、なかなか給料が出ないという厳しい現実に、ビジネスの難しさを改めて実感している。それでも「いまの数字は3カ月先の予定を歩んでいる」というまずまずの状態。「焦らずにやろうと思っています」

 ■大宮知信(おおみや・とものぶ) ノンフィクション・ライター。1948年、茨城県生まれ。中学卒業後、東京下町のネジ販売会社に集団就職。ギター流し、週刊誌編集者など二十数回の転職を繰り返し、現在に至る。政治、経済、社会問題など幅広い分野で執筆。『平山郁夫の真実』(新講社)『死ぬのにいくらかかるか!』(祥伝社)など著書多数。

 

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