その結果、マンションの価格差は東京都心と1時間通勤圏の郊外では、坪単価で4倍以上に達している。都心と1時間通勤圏で、所得の差も4倍に開いているのか。国勢調査などによれば、そこまでの差はない。
不動産の価値は立地で決まるが、ここまで差が開くと、もはや同じ商品とは思えないほどだ。
今後、郊外型のファミリーマンションは急激に供給を減らすことが想定される。10年後には、そういった市場が存続しているのかどうかさえ危うい。
都心の高級マンションはますます「金融商品」としての性格を強めていくだろう。とすれば、その価格は金融市場の動向に左右され、円高や円安、世界の株式市場の変動までもが、都心のマンション価格に影響する。
しかし、こういったマンション市場の二極化は不健全だ。なぜなら、「住む」ことを目的として購入を考える一般人にとってマンション市場を非常に分かりにくくしている。そして、リスクを高めている。
日本は自由経済なのだから市場に任せるのが原則ではあるが、マンション市場のバブルは、一般人を巻き込んだ悲喜劇を生み出すから始末に悪い。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「年収200万円からのマイホーム戦略」(WAVE出版)など。