東京大学医学部附属病院の医師による互助組織が母体というユニークな企業は、主力の非常勤医師紹介サービスが好調で、新規事業も経済産業省主催のビジネスコンテストでグランプリを獲得した。「ジャンプアップ企業」を率いる42歳の社長は、大事故やアクシデントを乗り越えながら、医師のため、患者のための取り組みを続けている。 (中田達也)
──社内では役員も社員もニックネームで呼び合っているそうですね
「思ったことをストレートに言って意思決定のスピードを上げる狙いです。決してなあなあではなく、社内のヒエラルキーや社員の評価についてはきちっとしています」
──社長のニックネームは
「英国の大学院時代のイングリッシュネーム『マロニー』を使っています。本名が馬場(ばば)なので、濁点が付かないソフトなところが気に入っています」
──会社の前身である医師の互助組織とはどのようなものですか
「大学医局は提携先の病院に医師を派遣しますが、病気で休んだり、学会の出張などで行けなくなる場合、横のつながりや先輩後輩の関係などで代わりの人を探しています。そのためのメーリングリストを発展させたのがMRTです」
──現在の規模は
「東京都内中心に約2万人の医師が登録していて、創業からの紹介件数は累計80万件以上です。約9割が口コミで広がっているのが特徴ですが、医師は全国に30万人いるので、まだまだ成長余力があります。関東から、全国へ展開を進めていきたいと思います」
──一般的な人材サービスとの違いは
「他の人材会社さんは転職の紹介が中心ですが、われわれは医師不足の調整が目的です。医師が疲弊しないように手助けすることが患者さんのためにもなると考えています」
──スマートフォンのテレビ電話機能を使った新たなサービス「ポケットドクター」とはどのようなものですか
「登録された医師のリストから予約し、遠隔で健康相談を受けられます。本年度中には24時間365日、すぐに医師に相談できるサービスも始める予定です」
──サービスを開発するきっかけは
「昨年4月、大事な会食の2時間ほど前に激しい腹痛に襲われました。友人のドクターに電話で相談して『たぶん30分ぐらいで治ると思う』とアドバイスをもらうことができましたが、その言葉がなければ救急病院に駆け込むしかなかったと思います。健康相談のニーズがあると考え、医師のネットワークを築いてきたわれわれだからこそできると思いました」