同じものを2度作るのは「二期作」だが、俳優の上野淳さん(59)がいま取り組んでいるシニアタレントの養成は別の作物。本業以外にラジオのパーソナリティー、芸能プロダクションの経営者と「三毛作」の仕事をこなしている。
福岡生まれの大阪育ち。大阪芸術大学を卒業後、シナリオライターを目指して東京へ。
「一旗揚げようなんて青雲の志があったわけではない」というが、人生はどう転ぶかわからない。入所した劇団テアトル・エコーの付属養成所は「1年で振り落とされて、プータローになっちゃった」と笑う。土木作業員のアルバイトをするなどの苦労はあったが、映画「ガキ帝国」(井筒和幸監督)でデビュー。俳優としてはまずまずの滑り出しだった。
日活ロマンポルノに出演し、東映ヤクザ映画に出るようになったあたりから、俳優としての色が変わり始めた。「特殊な役ばかり」でこわもてのヤクザとか暴力金貸し、犯人役、強姦魔などの悪役がほとんど。「お茶の間のお父さん役はやったことがない」と苦笑する。
生活のために4年間、新人俳優に演技を指導する講師となったことが転機になった。
「たまたま雇われた先が、シニアタレントがたくさんいるプロダクションだったんです」