ではシニア層、とくに高齢者層へのスマホ普及は絶望的なのだろうか。富田氏は「逆転の発想です。必要があれば、高齢者でもスマホやタブレットを使うようになります」と言う。その好例として、富田氏が挙げたのは、徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」である。
同町では里山の葉っぱや花を日本料理の“つま(飾り)”として旅館や料亭に出荷、年商2億6000万円もの一大ビジネスになっている。その収穫作業を行うのは地元の高齢者たちで、全国各地からの受注も高齢者たち自身がタブレット端末やパソコンで行っている。この成功例は「人生、いろどり」という題名で映画化もされたので、ご存じの方もいるだろう。
「つまり、“仕事に必要”という理由があれば、高齢者でもスマホやタブレットを使うようになるのです」(富田氏)。なるほど、シニアが必要性を感じていないのであれば、逆に必要性を作ってあげればいいということか。そこで筆者は少々とっぴな考えを富田氏にぶつけてみた。「キャリアが本当にシニアにスマホを普及させたいなら、スマホで楽しむ方法などを教えるより、スマホを使う仕事を斡旋(あっせん)するほうが、はるかに効果的ではないですか?」と。この“提案”に、富田氏は大きくうなずいてくれた。
実はこれ、ひとごとではない。夕刊フジは「サラリーマンの新聞」として創刊したが、現在では「元サラリーマン」の方々も読者の多くを占めている。夕刊フジ主催のセミナーや“読者の会”などで元サラリーマンの方と話をすると、「まだまだ働きたい、社会に貢献したい」と言う人が多い。同時に、「(数十年間働いてきた)自分の足跡や存在を残したい」と語る人も多い。夕刊フジ読者もやはり、「仕事」が人生のキーワードになっているのだ。