和食がユネスコの無形文化遺産に登録され、日本の食文化が世界中から熱い視線を浴びている。お酒も同様にと言いたいところだが、こちらはいまいちパッとしない。酒類全体に占める清酒のシェアは低下する一方だ。これではいかんと、日本酒復興のために立ち上がったのが、会社勤めを辞めて食の専門家になった石堂孝藏さん(60)。
異才の輩出で有名な日大芸術学部卒。小説家になりたかったが「物書きでは食っていけないので」郷里・仙台の住宅やリゾート開発を手がける会社に就職。その2カ月後には米国ロサンゼルス勤務を命ぜられ、不動産投資や日本向け商品の輸出を中心とする事業を立ち上げた。米国に約10年間滞在。40代半ばで外資系の投資ファンドに転職し、ゴルフ場の買収や資産管理の仕事に携わったが「会社が売却されて経営者が代わり、仕事がつまらなくなったので潮時かなと」2年前に退職。「ジャパンフード&ビバレッジ」を設立し社長に。1級フードアナリストの有資格者でもあり、食に関する原稿執筆や経営コンサルタントなどの仕事で退職後の生活を維持してきた。
「日本の食文化を世界に普及させるための一助になるような活動をしたい」と、その第1段階の事業として日本酒専門店を開業した。