修学旅行といえば、昔は重い荷物を持って名所旧跡をえっちらおっちら歩き回ったものだが、いまは手ぶらで旅行する。時代は変われば変わるものだ。
大手運送会社に勤めていた三苫(みとま)敏明さん(66)は6年前に独立して現在、修学旅行の手荷物を配送するビジネスを展開している。何だ、同じ米を作る「二期作」じゃないかといわれそうだが、最初に就職したときは観光業的な仕事だった。
九州・福岡の高校を出て、大手運送会社の福岡支店に入社。当然、荷物を運ぶ会社という認識で入った。ところが、配属されたところは「人を運ぶ」旅行業の部署。ツアーの企画や添乗員など、国内外旅行のサービスを提供する仕事に就いた。ところが、このビジネスの収支が悪化し事業停止、19年間旅行業務に携わった三苫さんも配置転換となってしまった。
「お前は営業ができるんだから、ホテルの荷物を取ってこいという話になりまして、仕方なく修学旅行の荷物の取り扱いを始めたんです」
40代半ばで東京支店勤務になったものの、三苫さんにとって運送業は異業種。「社内二毛作」を強いられたようなもので「半分リストラです。もう辞めようかと思った」が、踏みとどまった。今回の独立も宅配便事業の収益悪化という社内事情がきっかけだった。