前にこの欄で、官能小説の作家に転じた総合雑誌元編集長をご紹介した。言葉を道具として使う点では同じだが、表現するものが異なれば立派な二毛作だ。ジャーナリストの早川和宏さん(68)は詩を書き始めた。
「詩人の原点に戻って、いまの時代に欠けている詩心をメッセージとして伝えたい」
高校生の頃、大手紙に投稿した「男が死ぬとき」と題する作品が掲載された。三島由紀夫が衝撃的な死を遂げた時代の雰囲気や自分の心を表現した作品だ。あれから50年。
企業ものや宗教ものを書く社会派ジャーナリストとして、週刊誌や月刊誌に健筆を振るってきた。いまもビジネス情報誌でベンチャー企業の取材・執筆活動を続けながら、さまざまなテーマの単行本を出版。これまでに50冊の著書がある。
ライター稼業は食えないというのが常識だが、出版不況でますます苦しくなった。
「大変ですよ。筆力のあるライターが千葉でカラオケスナックを始めたとか、ベストセラーを書いた人が雀荘をやってるとか、いろんな話を聞く。僕の場合は詩人になった」
詩はもっと食えない。早川さんは「食える詩人」を目指す。
7年前、東京から故郷の新潟市に生活拠点を移した。