会社の仕事が予想外の趣味を生む。千葉県八千代市の田中巌さん(75)がそれまで関心がなかった歴史に興味を覚えるようになったのは、生命保険会社の仕事がきっかけだった。
北海道紋別市出身。北海道大学を卒業後、明治生命保険(現・明治安田生命保険)に入社。30代で上野や松戸の営業所長になり、セールスレディーの監督業務に従事。その後、本社の広域団体業務部に配属となり、法人営業を担当。最後の10年間は部長の肩書でトップセールスに歩いた。「企業や団体のトップは歴史が好きで、いろんな本を読んでいる。その話題に付いていくために、私もいや応なく時代小説を読んだり歴史の勉強をするようになったわけです」
定年前の59歳で退職し、浦安市商工会議所の専務理事に就任。前任者が70歳で退任したため、自分もそれまでは勤めるつもりでいたが、大病を患い3年で現役を退いた。
在職中に菜園付き別荘地を購入し、ログハウスを建て、露天風呂を作り、家庭菜園や陶芸も始めた。第二の人生はこうした趣味で過ごそうと考えていた。ところが歴史好きの友人に誘われ「八千代市郷土歴史研究会」に入会し、催し物や講演会に参加するようになってから思わぬ方向へ発展。郷土史の研究にのめり込んでいった。