【人たらしの極意】「エスプリの香りが漂っている」花咲かせた水丸さんとの“野際談義”ももう…

野際陽子さん(写真)にゾッコンだった水丸さん

 杜の都、仙台の「仙台文学館」で開催されている「イラストレーター 安西水丸展」(25日まで)に行ってきた。

 漫画、絵本、小説、エッセーと幅広く活躍した水丸さんだが、味わいのあるタッチのイラストはとりわけ秀逸。ユーモラスで、優しく、鋭い作品を眺めながら、2014年に亡くなった水丸さんとの日々を噛みしめた。

 先週も書いたが、毎年6月になると作家の百瀬博教さん、水丸さんら“不良仲間”と鳥越神社の祭りに繰り出した。私は水丸さんから光文社の文芸担当を紹介され、全共闘時代を舞台に暴力とエロスを描いた自伝的小説『散骨』を書いた。エッセイ集『美女が脱ぐ瞬間』の表紙デザインも描いてもらった。

 水丸さんは、SM嬢がムチをふるうイラストも、ほのぼのとした筆致で描いたが、私を「高須君は、本物のエロ事師だよ」と妙に鼓舞して、かわいがってくれた。

 あるとき浅草の元SKDダンサーがママを務めるスナックで、一献傾けていると、「私が一番ひいきにしている女性アナウンサーはね…」とポツリ語り出した。

 そのひとりが亡くなった野際陽子さんだった。

 「野際陽子にはフランスのエスプリの香りが漂っている。NHKを辞めてまでソルボンヌ大学に留学していたからね」

 戦後、ハリウッド映画一辺倒の風潮で、ヨーロッパ映画をこよなく愛した水丸さんは、「クローネンバーグの監督作品には野際さんのイメージが重なってしようがない」とも言っていた。

 われわれは、大東京の平和を脅かす“悪”と闘う無国籍な6人の猛者たちが活躍するドラマ「キイハンター」で女スパイを演じた野際さんにも夢中になった。ひとしきり野際談義に花を咲かせたが、2人とも居なくなってしまった…。 (出版プロデューサー)

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