【人たらしの極意】「食」と「エロス」で表す平和への思い 六十路になっても枯れていない

食で平和を描いた滝田監督

 滝田洋二郎監督の新作映画「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」を客席に紛れて見てきた。試写状もいただいたが、あえて東京・有楽町の日劇に出向いた。日劇ダンシングチームやロカビリーで知られた日本劇場の跡に有楽町マリオンが建って久しいが、来年2月にはシネコンに移転し、ついに映画館からも「日劇」の名がなくなるそうだ。なんとも寂しい…。

 映画は、大劇場にふさわしいスケールだった。天皇陛下の料理番による究極のフルコース「大日本帝国食菜全席」のレシピをめぐる闇が、日中戦争前の満州国(当時)と2000年代初頭の2つの時間を並行して語られる。不穏な時代を背景に主演の二宮和也も、料理人役の西島秀俊も“食”という平和の証しと格闘。見終わったあとは、妙に穏やかな気分になった。

 滝田監督とは約3年前に初めてお会いした。「陰陽師」「壬生義士伝」など滝田作品の常連で、「ラストレシピ」にも宮内庁職員役で出演する城戸裕次の父親に紹介された。

 1981年「痴漢女教師」で監督デビューし、ピンク映画でも鬼才ぶりを轟かせた滝田監督とはすぐに意気投合。「ヘアヌード写真集に賭けてきた高須さんの機微はよく分かる」と私やエロスに対する偏見が全くない。2008年に「おくりびと」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞してからも腰が低く、魅了され続けている。

 中央大時代に映画研究会で委員長を務めた私は、当時「映画芸術」の小川徹氏を通じ、「若松孝二監督の助監督をやらないか」と強く誘っていただいた。迷ったあげく、元妻との生活を考え、おもちゃのトミー(現タカラトミー)に職を得たのだが、滝田監督の「コミック雑誌なんかいらない!」(86年)を観たときは、シンパシーとジェラシーがないまぜになって、心を揺さぶられた。

 滝田監督が描く「食」と私の「エロス」。ともに六十路になっても、平和への思いは枯れていない! (出版プロデューサー)

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